2011.12.09
生きる確率50%の27歳青年をリアルに、
かつ爽やかに描いた『50/50 フィフティ・フィフティ』
現在、公開中の『50/50 フィフティ・フィフティ』が(特に)若い人々の間で共感を呼んでいる。
ストーリーは、こうだ。
主人公の27歳の青年アダムは、健康的な生活を送っていたにもかかわらず、突然5年生存率50%のガンを宣告される。自身の人生と向き合わざるを得なくなったアダムは病院を行き来し、セラピストの元へ通う毎日。しかし、親友カイルは「ガンと言えば女はすぐに心を開く」と言って、一緒にナンパに繰りだそうとするし、恋人の様子もおかしい。過剰に心配する母親に、よそよそしくなる会社の人間、とはいえ、誰もが彼を心配している。アダム自身も努めて明るくふるまおうとするものの、まったく回復の兆しも見えず、だんだん心は荒れ始め・・・。
私の場合、ガンの宣告、余命数カ月・・・映画紹介にこんなフレーズがあった時には、「あ~、元気な時に観よう・・・」と思ってしまう。あるいは、"思いっきり泣きたい"時。主人公が死んじゃうストーリーを観るには、それなりの覚悟が必要なのだ。(ここでの結末は、見てのお楽しみ)
アダム役のジョセフ・ゴードン=レヴィット(右)は『リバーランズ・スルーイット』で注目を集め、今や実力派に。恋人役には、ブライス・ダラス・ハワード(左)。主演の『ヴィレッジ』のほか『スパイダーマン3』『ターミネーター4』に出演。最近はプロデューサーとしても活躍。
しかし、本作はそれら"涙・涙"のストーリーとは少し趣が違った。
内容自体はとてもリアルなのだが、泣かせよう、という製作陣の意図は見えない。これまでの生活とは一変し、病院に通いセラピーを受けに行く彼の生活を悲壮感なく、ちょっぴりシニカルに描いていく。関わる人々は、常に口が悪くナンパの事しか興味がない親友カイルや、まだ新米で対応がぎこちないセラピスト、彼を看病しながらも途中で挫折してしまう彼女レイチェル、心配のあまりおせっかいになってしまう母親など、決してパーフェクトとは言えない人ばかり。当のアダムも、一般的に見ればかっこいいTV業界の人間だが、充実しているとはいえない人生に不満を感じている。誰も突然、愛に生きたりしない。偉業を成し遂げたりしない。そんな彼らを見ていると、どこかシンパシーを感じて、なんだか他人事とは思えなくなってくるのだ。
そんなお涙頂戴ではないストーリーが、若者達に共感を得ているのだろう。
カイル役のセス・ローゲン(右)は、本作にプロデューサーとしても参加。悪ふざけばかりして時々、アダムを怒らせるが、ラストにはぐっとくるシーンが。
■実話を元にしたストーリーに深みをもたせたキャスト陣
実はこの物語、カイル役のセス・ローゲンの友人ウィル・レイサーが自身の体験を元に書いた脚本だった。TVの世界でアシスタントプロデューサーをしていた彼に病魔が忍び寄り、ガンが発覚。一緒に仕事をしていたローゲンからの「せっかくだから、ガンをネタに脚本書けよ!」という言葉に背中を押され、自らのエピソードやさまざまな証言を集めて、人生の扉が閉じかけたひとりの青年の心の模様をユーモラスながらも繊細に描ききった。どうりで、リアルなワケである。
リアルなのは、脚本だけではない。登場するキャスト陣が抜群にいい。主人公アダムを演じるのは、『(500)日のサマー』でゴールデングローブ賞にノミネートされたジョセフ・ゴードン=レヴィット(『インセプション』にも!)、カイル役に、ミシェル・ゴンドリー監督作品の主演を務めたこともある人気コメディ俳優のセス・ローゲン。このふたりの出演で50%は既に成功していると言っていい。
さらに、ロン・ハワードの娘、ブライス・ダラス・ハワードが恋人役に、『マイレージ、マイライフ』のアナ・ケンドリックがセラピスト役に・・・と、彼らの魅力が作品に深みを持たせている。
アダムを取りまく4人が鉢合わせに。左から2番目が、セラピスト役のアナ・ケンドリック。その右横には、アンジェリカ・ヒューストン。『アダムスファミリー』のお母さん役で有名。あっ、こちらも息子がアダム。偶然!?(笑)
(C)IWC Productions, LLC
今年も終わりに近づき、この1年を振り返る方も多いだろう。命の大切さ、儚さを例年よりも深く感じた方もいたかも知れない。天災・人災、いずれにせよ人生の最期は誰にでもやってくる。そんな時、自分はどんな状態でありたいのか。本作はそんな問いかけを、時にシニカルにユーモラスに、そしてエモーショナルに問いかけてくれる。そして、ラストには爽やかな感動すら与えてくれる。こんな映画を大切な人と観るのも悪くない、と思った。
●監督/ジョナサン・レヴィン
●出演/ジョセフ・ゴードン=レヴィット、セス・ローゲン、ブライス・ダラス・ハワード、アナ・ケンドリック、アンジェリカ・ヒューストン
●2011年、アメリカ映画
●配給/アスミック・エース
●100分
TOHOシネマズ渋谷(Tel. 03-5489-4210)、TOHOシネマズ梅田(Tel. 06-6316-1312)ほかにて公開中。
http://5050.asmik-ace.co.jp/
mic
シネマスタイリスト・女優
女性誌やwebなどでの映画コラム執筆から舞台挨拶の司会、映画番組(TV、ラジオ)の出演等、シネマの世界で幅広く活動中。一方で自作自演のひとり芝居やポエトリーリーディングの上演など女優の顔も。
portrait : ©JUNICHI TAKAHASHI