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75歳で父がカミングアウト!?『人生はビギナーズ』はマイク・ミルズ監督が贈る人生讃歌の物語。

2012.01.26

75歳で父がカミングアウト!?『人生はビギナーズ』は
マイク・ミルズ監督が贈る人生讃歌の物語。

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父親が75歳で"ゲイ"だとカミングアウト・・・これだけ聞くと私はドタバタコメディなのかな?と思ってしまった。映画の中では大抵"ゲイ"はユニークでユーモアたっぷり。私たちを笑わせ和ませてくれる存在だし、本作の設定そのものが奇想天外でファニーだったから。ちょっとシニカルで楽しいドタバタコメディ・・・。

しかし、本作を観ると私が予想していたような映画とはまったく違った。

とっても繊細で、見終わった後にはじんわりと温かい気持ちが心に染みていくのがわかる・・・そんな感じだった。

■ストーリー


120126mic_02.jpg人と関わることが苦手なオリヴァー役のユアン・マクレガー。今年は、『パーフェクト・センス』や『ジャック・ザ・ジャイアント・キラー』(原題)『スター・ウォーズ』(3D版)と公開作品がいっぱい。

38歳、独身、名前はオリヴァー。デザインに関わる仕事をし、親友は犬のアーサー・・・お世辞にも人づきあいがいいとはいえない。
母親が亡くなってから5年後、オリヴァーは、癌を宣告された父親ハルから「私はゲイだ」とカミングアウトされる。「これからは本当の意味で人生を楽しみたい」と、ゲイの集まるパーティに参加し、新しい恋人も作り、新たな人生を謳歌し始める。

そんな父親の面倒を見ながら、オリヴァーは戸惑いを隠せないものの、父への理解とともに、閉じていた心が少しずつ開き始める。

■誕生は、マイク・ミルズ監督の実体験から


120126mic_03.jpgふたりでゲイカルチャーの雑誌を買い求めに本屋さんへ。演技については両者とも監督とよく話し合ったという。

実は驚くことに、本作はミルズ監督自身の実体験から生まれたものだという。
彼は、"父親がカミングアウトした事により、以前よりもエネルギーに溢れ、世の中への好奇心でいっぱいだった"事に感化され、「父親のすべてを書かなければならない。そうすべき時が来たと感じた。そして、その人生を通して、自分の殻を破ることについてもっとも表現したかった」と語っている。

確かに、父親ハルが自身の癌を受け入れながら、若い恋人を作ったりゲイの仲間との遊びに興じる姿は、見ていると何だか涙が滲んでしまいそうになるほど、愛おしく清らかさすら感じ、私まで大いに刺激された。

こうして監督は、ゲイという存在自体が認められなかった父親の時代を振り返りながら主人公オリヴァーを通して、父親との関係、彼の人生を見つめていく。
その一方で、ラブストーリーも。あるパーティでの不思議な魅力を持つアナとの出会いも彼の人生を変えていく。


120126mic_04.jpgオリヴァー(ユアン・マクレガー)&アナ(メラニー・ロラン)。メラニー・ロランは『オーケストラ!』『イングロリアス・バスターズ』にも出演(顔隠れてますが・・・)

寂しそうな母親の姿を見て育ったオリヴァーは愛を求めることに臆病になっていた。そんな彼の心を動かしたのが、アナだった。

彼は、そんな周囲の人々との交わりから、一歩ずつ前に進んでいく。

■クリストファー・プラマーはアカデミー助演男優賞ノミネート!

主人公オリヴァーには、『スター・ウォーズ』シリーズなどのハリウッド作からインディペンデントまで幅広い活躍を見せるユアン・マクレガー。彼の演技がとにかくいい! "40歳手前でもう絶対、恋愛できないよなぁ、俺"的オーラや(笑)、受け入れがたい喪失感、絶対的な愛を目の前にして立ちすくんでしまうシーンなど、彼の作品への理解の深さを大いに感じさせてくれた。アナ役のメラニー・ロランも吸い込まれそうな瞳で言葉にできない気持ちを語りだす。


120126mic_05.jpg名優クリストファー・プラマーの近年の代表作は、『インサイダー』『Dr.パルナサスの鏡』。実は『サウンド・オブ・ミュージック』(1965年)のトラップ大佐はこの方。


そして、父親ハル役にはクリストファー・プラマー。監督が絶大な信頼を寄せ、出演オファーの際には直筆の手紙を書いたという(ユアンに対しても)。その演技は多方面で認められ、本年度ゴールデングローブ賞助演男優賞を受賞、アカデミー助演男優賞にもノミネートされている。


120126mic_06.jpg登場する度に和みます(笑)本名はコスモ。
©2010 Beginners Movie, LLC. All Rights Reserved.

また忘れてはならないのが、オリヴァーの親友(!?)アーサー役、ジャックラッセル・テリアだ。犬だけど"字幕"で喋ります(笑)。そのセリフが何とも粋で、本当にキュート。そんな監督の遊び心も微笑ましい。

■本当に、自分の人生を生きる・・・ということ

本作が奇想天外な設定でありながら、こんなにも私に深い共感をもたらす理由は、結局のところ普遍的な親子の問題を扱っているからだと思う。

時代や家庭環境の中で作られた、どこか違和感の伴う自分と向き合い、そこから脱却して新たな一歩を踏み出し、何となく居心地の悪かった人生を本来の自分のものにしていく・・・そこから本当の人生が始まる。

その一歩を踏み出すまでの迷いや葛藤、そして勇気や許しを、監督は大きな愛をもって描いてくれているのだ。

マイク・ミルズ監督といえば、映画『サム・サッカー』のほか、 ギャップやリーバイスなどのCMをはじめ、有名アーティストのミュージックビデオを手がける世界的アーティスト。

その映像や音楽のセンスは随所に散りばめられているが、本作では何よりも父親への愛情と尊敬に溢れている。
そんな愛の片鱗に少し触れただけでも、じーんと何かが沁みてくる。思い通りの人生を生きる事って何て美しいんだと思わせてくれる、そんな作品だ。


『人生はビギナーズ』
●監督/マイク・ミルズ
●出演/ユアン・マクレガー、クリストファー・プラマー、メラニー・ロラン
●2010年、アメリカ映画
●配給/ファントム・フィルム・クロックワークス
●105分
http://www.jinsei-beginners.com/
2月4日(土)より、新宿バルト9(Tel. 03-5369-4955)、 TOHOシネマズ シャンテ(Tel. 03-3591-1511)ほかにて公開。

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2012.01.26  |  CULTURE
COLUMNIST

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シネマスタイリスト・女優

女性誌やwebなどでの映画コラム執筆から舞台挨拶の司会、映画番組(TV、ラジオ)の出演等、シネマの世界で幅広く活動中。一方で自作自演のひとり芝居やポエトリーリーディングの上演など女優の顔も。
portrait : ©JUNICHI TAKAHASHI

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