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『JUNO』の監督&脚本家、シャーリーズ・セロンが贈る37歳バツイチ女性の崖っぷち人生『ヤング≒アダルト』

2012.02.17

『JUNO』の監督&脚本家、シャーリーズ・セロンが贈る
37歳バツイチ女性の崖っぷち人生『ヤング≒アダルト』

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あの、美しいシャーリーズ・セロンがなぜかキティちゃんのTシャツを着て映っているポスターの映画『ヤングアダルト』・・・本作のふれこみは、こんな感じだ。

37歳、バツイチ。大人の女になりきれない女性の心の機微を絶妙に描く"感動"の物語。

"感動"の物語?? い~やいやいや、本作を見終わった私は正直 、悠長に"感動"なんて言ってられなかった。そのすべてが他人事と思えず、心が痛すぎて終始、苦笑い。何ていうか、そんなに私のことを知らない人に私の欠点をすべて言い当てられて、面目を保つために笑おうとするんだけど、かなり無理がある歪んだ笑い・・・みたいな(笑)?

とりあえず、一気にストーリーを説明してしまおう。


120217mic_02.jpgゴーストライターのメイビス。恋人はおらず、心が許せるのは愛犬のポメラニアン、心の慰めはお酒・・・。

主人公のメイビス・ゲイリーは"自称"作家。その実はゴーストライターで、自分の名前が表紙を飾ることはない。執筆中のヤングアダルト(少女向け小説)シリーズも人気が落ちて打ち切りに。そんな折、高校時代につきあっていた元カレから、出産パーティのお誘いメールが舞い込んだ。心は"学生のまま"、美貌も衰えていないと信じるメイビスは妻子のいる彼とヨリを戻そうと故郷に戻る決心をする。そこで彼女の取った行動とは・・・。

あえて繰り返すけれど「37歳、バツイチ」の彼女は田舎から都会へ出てクリエイティブな仕事をしている、いわゆる"成功者"。かつては高校で女王様だった栄光も手伝って、故郷に戻るや同級生と出会っても見栄っぱりな話ばかり。意中の元カレと再会する時には、キメキメのファッションに身を包み、元カレの奥さん(彼女もまた同級生)に嫉妬心&ライバル心を燃やして当時の元カレ話を持ち出したり、とにかく手に負えない。当の本人は、そんな自分のイタさには気づきもせず、"元カレは妻と子育てに飽き飽きしてるんだわ、もうすぐ私の元へ帰ってくる!"と信じて疑わない。とにかく、自分の過去にしがみついたまま、あの頃の恋が再び甦ると本気で思っているのだ。


120217mic_03_new.jpg左:元カレ役には『恋とニュースの作り方』のパトリック・ウィルソン。

私自身、彼女のような美貌は悲しいかな皆無だけど、独身で同じように物書きの仕事もしている身としては、もはや他人事として見ていられなかった(涙)。

結婚はもちろん、母親になるワケでもなく、また会社に入って部下を持つことのない私にとっては、"妻""母""上司"といった大人になるキッカケを失ったまま、妄想に任せて文章を紡ぎ・・・現実にはありえない恋愛映画ばかりを観て(←お仕事ですから!)理想ばかりが膨らんで・・・大人の階段を見失ったまま平坦な道を歩んできてしまった。このままじゃ、私の場合、本作のラストシーンでは済まないのでは・・・あぁぁ。

と、この気持ちを宣伝担当の女性にこっそり告白したら「他の女性ライターさんも皆さんそう仰っていましたよ!」とにっこり。ア、アハハ。(彼女の左手の薬指にはリングが・・・余裕の笑顔はそのせい?ってチェック済みの私がこれまたイタい)

と、私を帰りの電車の中でどよよーんとさせてしまうほど、現代に生きるひとりの女性の現実をリアルに描ききったのは、『JUNO』で妊娠を決意した16歳の女の子を描き、『マイレージ・マイライフ』ではリストラを宣告するために世界中を飛び回るビジネスマンを主人公にジョージ・クルーニーとタッグを組んだジェイソン・ライトマン監督。そして、脚本は『JUNO』のディアブロ・コディだ。


120217mic_04.jpgここではトホホなプライドの高い女役だが、実際のシャーリーズ・セロンの公式サイトは、チャリティ活動がメインになっている。http://www.charlizeafricaoutreach.org/

かつて『ベティ・サイズモア』というレニー・ゼルウィガー主演のナンセンス・サスペンス・コメディがあった。町でウェイトレスをしているベティは、メロドラマの主人公に熱を上げ、夢と現実の区別がつかなくなって彼を追い続けるという、同じように"勘違い"しちゃってる女性の話なのだが、ここでのベティは可愛げがあった。どこか"不思議ちゃん"的なキャラクターのせいか、どこか許せた。

だが、メイビスは申し訳ないけど可愛げなんて一切ない。むしろ本当にイヤ~な女なのだ。映画の脇役には必ず登場しても、主役にはならない美人だけどイジワルなタイプの女。

そんな女優なら普通は断りたくなるような役柄を、怖がりもせず演じきったのが『モンスター』でオスカーを獲得したシャーリーズ・セロンだ。朝起きた時のボサボサの髪、顔に刻まれたほうれい線、目の下のたるみ・・・え?あのゴージャスな彼女がここまで見せていいの?とこちらが心配になるほどのすっぴんを公開(わざと老けすっぴんメイクにしたのでは?と勘ぐってしまうほど)。元カレに会うとなったら、これがメイクとファッションで超美貌!プライドが高くて、でも実は傷つきやすくて臆病なメイビスを体当たりで演じたシャーリーズは、本作でゴールデングローブ賞主演女優賞にノミネートされた。


120217mic_05.jpg右:元彼の妻を演じるのが、『トワイライト』シリーズのエリザベス・リーサー。 © 2011 Paramount Pictures and Mercury Productions, LLC. All Rights Reserved.

やはり女性としては、まだまだ自分は若いと思いたい。キラキラした恋愛をしていたあの頃のままでいたいし、何ならその時の彼と再び出会って、ゴールインなんて・・・ドラマみたいな恋の夢も捨てたくない。そう思っているほうが現実を見るよりも何となく幸せな気がする。

でも、本作の中での元カレの奥さんを見ていると、そうでもないのかも・・・と考えさせられる。彼女は母である今の立場の幸せを享受し、年齢を経た今だからこその思いやりを彼女の前で見せ、地に足がしっかりとついている。

女性の幸福と年齢は密接だ。時には敵になり、でも味方につけたら最強。最近はアンチエイジングではなく"ウィズエイジング"なんて言葉も流行っておるようだけど、どちらにせよ、年齢から逃げていては幸福も近づいてはくれない。

また過去にしがみついていても始まらない。脚本家のコディが「私たちは過去に執着する世代だと思う」と話し、「facebookで他人の過去を簡単に知ることができるようになったばかりに、尚更、他人の幸せと自分を比べるようになってしまう」と話していたが、確かにfacebookで元カレと繋がって幸せそうな家族の写真に心を消耗させたり、知人、友人のキラキラした過去の記録に嫉妬してもしょうがないのだ。

ジェイソン・ライトマン監督とディアブロ・コディは、映画だからといってファンタジーな結末は用意せず、その代わりに現代に生きる女性の幸福とは何かを、私たちに問いかける。

男性が観るとどう感じるか・・・はまったく予想がつかないけれど、私にとってはシャーリーズの勇気に感動、おおいに考えさせられる一作だった。


『ヤング≒アダルト』
●監督・製作/ジェイソン・ライトマン
●出演/シャーリーズ・セロン、パトリック・ウィルソン、パットン・オズワルト、エリザベス・リーサー
●2011年、アメリカ映画
●配給/パラマウント ピクチャーズ ジャパン
●94分
http://www.young-adult.jp/
2月25日(土)TOHOシネマズ シャンテ(Tel. 03-3591-1511)ほかにて公開。

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2012.02.17  |  CULTURE
COLUMNIST

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シネマスタイリスト・女優

女性誌やwebなどでの映画コラム執筆から舞台挨拶の司会、映画番組(TV、ラジオ)の出演等、シネマの世界で幅広く活動中。一方で自作自演のひとり芝居やポエトリーリーディングの上演など女優の顔も。
portrait : ©JUNICHI TAKAHASHI

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