2009.10.23
話題のデザイナー FRONTと、
スタジオ・ランチの木曜日
ストックホルムのデザイナー、FRONT。国立のアートスクール、KONSTFACK(コンストファック)を卒業した女性4名をコアメンバーとし、Moooi(モーイ)やMoroso(モローゾ)、Established & Sons(エスタブリッシュド&サンズ)など、今や世界的な企業とのプロジェクトを多数抱える話題のデザインスタジオです。
Morosoのためのデザインから「Soft Wood Sofa(ソフトウッドソファ)」、「small side table(スモール・サイドテーブル)」。Courtesy of FRONT(他の作品写真も)
多数のプロジェクトが進行中、スタッフも増えて忙しい日々を送る彼女たち。そこで、スタジオでランチをいただきながらのミーティングとなりました。バスを乗り継ぎ、市内、セーデルマルム島にある彼女たちのスタジオを訪ねると、ちょうどランチの準備を終えてくれていたところ......。
この日は4名のコアメンバーのうち、アンナとシャーロットとのランチです。国外滞在中だったソフィアとはskypeで会話をさせてもらい、多忙のカチアとは、この翌日、別の場所でお会いでき......こうして、滞在中、4人全員と話をすることができました。
アンナとシャルロット。テーブル背後に置かれている馬の照明やブタのサイドテーブルはモーイから商品化されています。Photo(c)Noriko Kawakami
スライスしたリンゴの入ったグリーンサラダ。ポテトにサーモン。私のためにスウェーデンの料理を用意してくれていたことに大感激です。市内のLiljevalchs(リリエヴァルスク)美術館でちょうどこのとき開幕した「MÄRTA FLYGER IGEN!」展に彼女たちの作品が出展されていたこともあり、こうした近況を語りながらのランチとなりました。
春のミラノサローネの際には慌ただしい挨拶だけしかできなかったこともあり、FRONTの近作について、最近コラボレーションしている企業について、など、話題は尽きず......。
スウェーデンの伝統料理を用意してくれるという優しさ。FRONTとは仲良しの横山いくこさんも同席くださり、楽しいランチに。
市内のLiljevalchs(リリエヴァルスク)美術館では歴史的な一枚を現代デザイナーが新たに解釈してデザインするという企画に参加しています。同展詳細は横山いくこさんのブログで紹介される予定です。お楽しみに。
私からは、日本のデザインの状況や、21_21 DESIGN SIGHTでの最新展覧会「The Outline 見えていない輪郭」の話などを。じつはFRONTと横山さんは、21_21の第1回企画展覧会、「chocolate(チョコレート)」展(2007年)に参加してくれ、そのために来日もしてくれていたのです。
その前年、安藤忠雄さん設計の建物がまだ施工中だった2006年秋には、「会場視察」として、ヘルメット姿で建設現場にも足を運んでくれた彼女たち。そのときの展覧会ディレクションを務めたデザイナー、深澤直人さんが現在の「The Outline」展出展作家となっていることもあり、深澤デザインの魅力も話題に、この日のランチタイムも大いに盛り上がりました。
「chocolate」展のために制作してくれた「changing vase(チェンジングベース)」。異なる柄をプリントした何層ものアルミホイルで包まれたガラスの花びん。ホイルを1枚めくると隠れていた柄が現れます。クリスマスのサンタチョコやイースターのウサギチョコなど、「そのまま飾っておきたいけれど、チョコは食べたい。食べるためにはラッピングをむかないと......」というチョコレートを巡る幼い頃のジレンマを表した秀作です。
FRONTと改めて話をしたのは今から5年ほど前のことです。ストックホルム・ファニチュアフェアの会場で話をしたり、壁一面を造花で埋めてしまった市内ギャラリーでの個展を目にしたり、ミラノサローネ時期の展示会場で会ったり。静かな一角にあるこのスタジオを初めて訪ねたのは、3年前......。
納得ゆく仕事を実現できたデザイナーと、引き続き情報交換ができることは嬉しいことです。そのつど何を考えているのかを伝えあいながら、再びベストのプロジェクトを実現できるために必要なことは何かと考えを巡らせる時間は、本当に楽しい。FRONTとは再びエキサイティングなプロジェクトを実現したいと、この日も改めて強く思いました。
ストックホルム、東京、来春のミラノ? 次に会える日を楽しみに、彼女たちのスタジオを後にしました。
強風に吹き飛ばされてしまったような「Blow Away Vase(ブロー・アウェイ・ベース)」。ヴィクトリア&アルバート美術館のパーマネントコレクションにも。Moooi。
Established & Sonsのための「Shade Mirror(シェードミラー)」。記憶にどこかつながっていたり、伝統をふまえていたり、視覚の遊びも加わりながら、こういう感覚ってある......と腑に落ちる表現だったり。コンセプチュアルで知的でポエティック、そのうえ力強さを備えています。どれも気になる作品ばかり。
It was wonderful meeting again with members of FRONT, the Swedish design studio. I am happy to have been cultivating our relationship.
I first met them 5 years ago in Stockholm and soon after in Milan at the Milan Design week. Since then, 3 years ago, I visited their studio in Stockholm, after that, we got together to help to bring to life the exhibition directed by Naoto Fukasawa, "chocolate," at 21_21 DESIGN SIGHT in 2007. Before that exhibition, FRONT members were kind enough to visit our exhibition venue wearing safety helmets when that building (designed by Tadao Ando) was still under construction!
This autumn, I had a great time again with them exchanging perspective on our current projects. For example, we shared ideas about their new exhibition piece for Märta Måås-Fjetterström at Liljevalch, and 21_21 DESIGN SIGHT's new exhibition introducing Naoto Fukaswa's product design, while enjoying the lunch FRONT prepared for me. As the relationship blossoms, opportunities to consider our future projects will arise.
text by Noriko Kawakami
川上典李子
ジャーナリスト
Noriko Kawakami, journalist
デザイン誌『AXIS』編集部を経て、94年独立。ドムスデザインアカデミーリサーチセンターの日伊プロジェクトへの参加(1994-1996年)を始め、デザインリサーチにも関わる。現在は、「21_21 DESIGN SIGHT」のアソシエイトディレクターとしても活動。主な著書に『Realising Design』(TOTO出版)など。