2009.03.27
LVホールで、光のバレエ ?!
グエナエル・ニコラ「LIGHT - LIGHT」
「マジック?」「蛍!」。私のすぐ前にいた2人が、会場に入ったとたんに、驚きの声をあげた。暗闇に跳ねる「光の球」。その数、80個だそうだ。静かに飛んだり、ふわふわと浮遊し続けていたり。手をのばせば、ひとつひとつの光をつかめそう。
ルイ・ヴィトン表参道、LVホールを会場に開幕した「LIGHT - LIGHT」は、デザインスタジオ「キュリオシティ」を率いるグエナエル・ニコラによる、光のインスタレーション。「手でつかむことのできない光を、さわれるようにしたかったんだ」と彼。
暗闇に浮かぶ光。ミラノサローネでは各国のジャーナリストが「!」と息をのんだインスタレーション。写真ではお伝えしにくいのが残念ですが、光がリズミカルに動く様子、会場でぜひ体験してみてください。
昨年4月のミラノサローネの際に「TOKYO WONDER」として披露されて、大好評だったインスタレーション「LIGHT-LIGHT」を、「バージョンアップして」(グエナエル)東京で紹介できることになったもの。ミラノの会期中に何度も会場を見ていた私も、改めて驚かされてしまった。
手前に写っているのが来場した皆さん、奥に並ぶ点が光の球です。動く光が反射した天井も不思議。ミラノ展で上映されていた映像の音楽を手がけていた畑中正人さんの音楽が今回、流れています。
その繊細な光の動きを会場で体験いただく参考に、インスタレーションが完成するまでのプロセスを、少しだけ紹介しておきましょう。

キュリオシティでの試作風景から。スタンド内にコンピュータ制御された空気を通し、球の様々な動きを実現する、というしくみです。光のコリオグラファーとしての表現では、テクノロジーを巧みに扱うことが必要でした。
パイプを吹くとパイプ先端のボールが浮遊するおもちゃで娘が遊んでいるのを見て、光を空気で浮遊させたらどうか、と思いついたそう。さらに光を組みあわせることで、光の球の動きが誕生した。
3月24日のオープニングレセプションでは、会場の一角に「食べられる」インスタレーション、「LIHGT-FOOD」も登場。ふるまわれたシャンパンとよくあうブルーベリー味のメレンゲ菓子が空中にふわふわと......。手でとって味わうか、浮遊するメレンゲを大胆にもそのままパクリと食べてしまうか。ゲームのようで楽しくて、何個も食べ続けていた人も!

「LIGHT-FOOD」も好評でした。このコーナーは会期中も続くそうで、もうすぐ最中(もなか)に変わるそう。グエナエル本人は、さすがに慣れた感じでキャッチ。
オープニングの「食べられる光」の正体はこれでした! グエナエルがパッケージやケーキのデザインを手がけているアンリ・シャルパンティエの特製。ブルーベリー味。
グエナエルの発想には、いつも驚かされてばかり。この日レセプション会場を去るときに手渡されたのは、オリジナルのゴールドボックスにセットされた、甘くロアンチックな香りのマグノリアのアロマオイルだった。
光、味、香り......目に見えるかたちがないものも大切な表現ととらえて、活動を続ける彼らしいメッセージ。パッケージのなかにはグエナエルの言葉も添えられていた。
「マグノリアは美しい白い花、透明感そして喜びをもたらしてくれます。
こうした感覚を私たちは、デザインを通して探っていきたいと考えます」
つかんでいることなどできない光。いつしか消えてしまう香り。確かな「かたち」をもたないものだけれど、心に一度響いた光や香りであれば、美しい記憶となって咲き続ける。そのことをグエナエル・ニコラは知っている。
会場のエントランスで、何やら確認作業に没頭していたグエナエル。音楽を手がけたサウンドアーティストの畑中正人さん。
日本で活動を開始し、パートナーの宮元玲子さんとキュリオシティを設立したのが1998年。ユニクロショップ、MARS THE SALONのインテリア、カッシーナIXCの家具など広くデザインし、最近ではANAクラウンプラザ大阪のロビーを完成させたところ。東京ミッドタウン・ガーデンの「SAKURA STORY」(桜が散るまで開催中)では彼が手がけた桜ライトアップが楽しめます。
「LIGHT-LIGHT IN TOKYO」
4月5日(日)まで、13:00〜20:00
ルイ・ヴィトン表参道7階 LVホール
キュリオシティの活動は
http://www.curiosity.jp
川上典李子
ジャーナリスト
Noriko Kawakami, journalist
デザイン誌『AXIS』編集部を経て、94年独立。ドムスデザインアカデミーリサーチセンターの日伊プロジェクトへの参加(1994-1996年)を始め、デザインリサーチにも関わる。現在は、「21_21 DESIGN SIGHT」のアソシエイトディレクターとしても活動。主な著書に『Realising Design』(TOTO出版)など。