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New Stars----8人の挑戦。スタンポット・メット・ローデコール

2010.01.26

New Stars----8人の挑戦。
スタンポット・メット・ローデコール

じゃがいもをすりつぶした「スタンポット」(マッシュポテト)に、赤キャベツ「ローデコール」をトッピング。「どんな味?」と思わず考えてしまう写真がキービジュアルとなった展覧会、「STAMPPOT MET RODEKOOL(スタンポット・メット・ローデコール)」が始まりました。2月2日までの開催です。

じゃがいも赤キャベツではありますが、シェフの展覧会ではありません。オランダのアート、デザインアカデミーに学んだ日本人若手デザイナーの作品展。アカデミー修了後、日本に帰国した人もいますが、引き続き現地の学校に在籍している人も。海外を拠点として新たな一歩を踏み出した人もいます。世界をベースに動き始めた8名です。

k1.jpgスタンポットにローデコールをトッピングする料理は、実はオランダにはないのだとか。「自分流に新しいものをつくりだす」という8名の意欲(とユーモア)を示すビジュアルなのでした。写真の皿はデルフト焼です。

すでに昨年11月、本コラムで以前に紹介した、アムステルダム、Lloyd Hotel(ロイドホテル)で展覧会が開催されています。東京展に続いて5月、オランダでファイナルプレゼンテーションが予定されています。場所はライデンにあるシーボルトハウス

アムステルダム、東京、ライデンという3箇所開催を企画してしまうところにも、8名の情熱のほどがうかがえます。これはやはり本人たちに会わなくては。そう思い、都内の展覧会会場で作品の解説をしてもらいました。

「人と人との関係を大切にしたいと、常に考えています」と言うのは、阿部さやかさん。「オランダは人に出会えるサイズの国で、そこが自分にあっている」そう。また、次のコメントも。「作品に対する意見を、皆が明快に、はっきりと口にする。厳しいぐらいなのですけれど、そうした環境が私は好きで......」。

「ジュエリーと人の関係」に興味を抱く阿部さんの作品はドローイング(ですが立体というユニークなもの)。週2回、オランダ人女性の家を訪ね、昼食を共にし、会話を重ねたうえで描いたものです。「大小スペースと人との関係」として「ポケット」に注目する阿部さんらしく、ポケットのようなバッグが。会場で配布されていた資料には次の一文もありました。「濃縮した時間はただの友人関係でなく、二人の関係をより繊細で壊れやすいものへと導いたのです」。阿部さんの「人」の深いとらえ方、興味をそそられるなあ......。

k2.JPG©Sayaka Abe
『ポケットの中の世界』から「マリアシリーズ」。人生の光と影を、68歳になるオランダ人女性を通して考察、その記録が今回の作品に。阿部さんは引き続きアムステルダム在住。Photo: ©Noriko Kawakami(会場での出展作家写真、他も)

k3.jpg©Sayaka Abe
『ポケットの中の世界』。「探しものは、実はポケットの外にあるのかも?!」......。

人と他のものとの関係を探るプロジェクトでは、久米希実さんの作品にも注目を。『Cast-off Skin:成長する服』は、身につける人や時間の経過にあわせて変化し続ける衣服の考え方を表わしたもの。表面コーティングされたタイトスカートは、動くことでプリーツが生まれます。穴があけられ、内に封じられた羽根をその穴から出して着る(羽根が自然と出てきたりもする)シャツなども。

「クローゼットをあけると、次の抜け殻になることを待つ服で溢れています。しみがつき、穴があき、毛玉ができ、ほころんでいます。しかし私は、汚れとは呼びません。すべては私が存在した過去の証だから」。

k4.jpg©Nozomi Kume
久米希実『Cast-Off Ski』から「Holes」。デザインに「時間」を組み込んだ作品。人が着ていくことで、成長する服。

k5.jpg「時間のデザイン」「自分のトレース」と。会場での展示方法もよく考えられています。

一着のワンピースドレスをパズルさながらに分解してしまったのは、金井大明さん。着る人が各ピースをジッパーで連結、好きなかたちの服、身近なものとして愛用できます。
「ファッションデザインとユニバーサルデザインの重なりを模索しています。既成服の"フィットする定義"を解体し、様子の違う個人個人の正解を導くことに焦点をあてました」。

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k7.jpg©Hiroaki Kanai
金井大明『ぱずる』。パズルのように分解されたドレス。ジッパーで連結して着用したり、身の回りの品として愛用したり。「ひとりひとりのかたちを、遊びながら考える時間を生みだす」。 金井さんは現在、ベルリン在住です。

日本とオランダ、双方の伝統技術をふまえた作品もあります。
松尾はるかさんは、出身地である三重県の萬古焼とオランダの伝統的な刺繍を融合させた陶磁器を制作。急須の表面には、オランダのマダムの手になる刺繍が柄として刻まれています。鶏の頭がフタになっているなど、とにかく気になる造形です。クマやリスなどのオブジェもつくられ、展覧会に先がけて、マダムたちのお茶会を彩ったそう。

k8.jpg©Haruka Matsuo
松尾はるか『Dream in the sea mixed with sugar』。萬古焼きとオランダの伝統刺繍、さらには非日常を組み合わせた急須。「日常から5cmほど浮いた世界、を、アジア、ヨーロッパの土地を通して表現したものです」。

ところでこの展覧会、作品をオランダの一般家庭で使ってもらうという実験的なプロセスを準備段階に含んでいて、そのことを思いながら作品を見ることもおすすめです。それにしても、「使う人の姿を通して」各自の提案を紹介しようという発想が、見ごと。作品を使用した人々との対話をおさめたドキュメンタリーフィルムも、会場では紹介されています。

各々にコンセプトが明快なプロダクトデザインの提案もぜひ目にしてください。

k9.jpg©Tatsuo Kuroda
黒田達郎『コンパストライト、コンパスウォーマー』。離れて暮らす人を思ってなされた提案。大切な人のいる場所にそのものを向ける行為によって、ランプ、ウォーマーのスイッチが入ります。夜を照らすランプ(写真)、寒い夜を温めるハンディサイズのウォーマー。大切な人や場所との関係を表わす、すぐれた提案です。

k10.jpg©Fumiaki Goto
後藤史明『時を刻む、役に立つ、光を差す』。日本語の比喩に注目した後藤さんは、比喩表現の具現化から、時計、照明をデザイン。写真上は時の経過とともに針が鉄板に傷をつけ、さらにはサビが生じるというもの。時の流れを視覚的に表わした力作3点。

子どもが「わ〜、何これ!」と凝視していたのは、廣瀬康仁さんの作品。プラスチック本来のかたちを表現する、という発想に基づいたものです。「自然の対義として扱われているプラスチックだけれど、もとをたどれば有機物由来の石油。ある意味では自然から生まれたものです」。鍾乳洞のような有機的な姿が忘れられない、これもまた渾身作。

k11.jpg©Yasuhito Hirose
廣瀬康仁『Water Imprint』。プラスチックが水の中で生み出す自然のかたち。

中村 穣さんの作品は、あえて時間を必要とするコーヒーメーカー。火にかけると上部に蒸気がたまり、水滴となってポタポタと落ちてコーヒーをいれるという、新しいしくみを考えてしまったのでした(拍手!)。電気コーヒーメーカーですぐにコーヒーをいれることのできる時代に、水蒸気が発生する様子を「眺める」時間。この作品でコーヒーを味わったオランダ人家族、デザイン趣旨を理解し、賞賛のコメントを口にしていました。

k12.jpg©Jo Nakamura
中村 穣『Vaper Drops』。儀式性を持った、新しいコーヒーのいれ方。コーヒーをいれるのに30分ほどかかるそうですが、その時間が会話を生み、食後の時間を彩ったり。

「オランダはコンセプト重視。コンセプチュアルで自由な発想であることが大切です」。そう言うのは、今回、ワンピースドレスをパズルにしてしまった金井さん。「同時に、デザインをする際、日本人の自分が気になる点もあって、そのうえでどう考えるのかが大切だと思いました。アートとデザインと、領域が明確に分かれているのではなくて、グラデーションのようにつながっているオランダでは、自分の立ち位置を明快にしないと」。

k13.jpg左より、金井大明さん、久米希実さん、阿部さやかさん。3人が展覧会企画の中心メンバーです。一番右が"長時間抽出"コーヒーメーカーを実現してしまった中村 穣さん。 Photo by Noriko Kawakami

スタンポットとローデコールを組み合わせてしまうといった柔軟な発想で、アートやデザインと人との関係を考えている彼ら。「作品を自由に使ってもらう」ドキュメンタリーフィルムからも、日本を離れて学んでいた8人が、現地の人々との対話も大切に、それぞれのテーマに取り組んでいた様子が伝わってきました。

何より、会場で解説をしてくれる皆の瞳がきらきらしていて......! これからも各自の「立ち位置」で、力強い提案を続けてくれることを期待しています。

・「スタンポット・メット・ローデコール」展
2月2日まで。入場無料
リビングデザインセンターOZONE 3F 
OZONEプラザ(新宿パークタワー内) 
http://ozone.co.jp 10:30~19:00

8名のプロフィールを含む展覧会情報は以下で
http://www.stamppotmetrodekool.org


"STAMPPOT MET RODEKOOL," a design exhibition featuring eight Japanese designers has just started in Tokyo. It will continue until the 2nd of February.
The names of these young designers/"new stars" are: Sayaka Abe, Nozomi Kume, Hiroaki Kanai, Tatsuo kuroda, Fumiaki Goto, Yasuhito Hirose and Jo Nakamura. All of them graduated from design/art academies in the Netherlands.
To look into the meaning of the objects around us, they have been contemplating the relationship between people and design, as well as people and people.
Before they held their first exhibition at the Lloyd Hotel and Cultural Embassy in Amsterdam last autumn, they asked a number of Dutch people to try to use their exhibited pieces in their daily life. From what I saw, I was able to feel their sincere effort to speculate about the meaning of design. Based on this dialogue, I believe that they will continue to realise their potential. After the exhibition in Tokyo, we can see their passion again in person during their final presentation at the SieboldHuis in Leiden, the Netherlands, this May.
text by Noriko Kawakami

"STAMPPOT MET RODEKOOL" 
http://www.stamppotmetrodekool.org/

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