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「セカンド・ネイチャー」展。「ヴィーナス」の美しき変容

2009.01.21

「セカンド・ネイチャー」展。
「ヴィーナス」の美しき変容


デザイナー、吉岡徳仁さんの思いがたっぷりと込められた、「21_21 DESIGN SIGHT第4回企画展『吉岡徳仁ディレクション セカンド・ネイチャー』」(会場: 21_21 DESIGN SIGHT)が、1月18日に幕を閉じた。

私も企画に関わっていたので、多くのかたがたに展覧会を見ていただけたのが本当に嬉しい。繰りかえし足を運んでくださった方々もいた。(来場くださった皆さん、会場で感想を伝えてくださった皆さん、ありがとうございました)

kawakami1.jpg天井を覆い尽くしたインスタレーション「CLOUDS」のもと、水槽内で椅子をつくるプロセスを紹介。この写真は昨年秋、開幕直後の様子です。
photo: Masaya Yoshimura

吉岡さんの作品のひとつに、「ヴィーナス ---- 結晶の椅子」があった。昨年10月の開幕から3カ月の会期中、その姿をどんどん変えていったユニークな作品だ。

この椅子、まずは椅子の原型をポリエステル繊維でかたちづくる(この段階では強度は不十分。実際に座ることはできません)。これを鉱物の一種をとかした水のなかに入れておく。時の経過とともに、結晶が育っていく......。

成長をとげる結晶が椅子の構造となり、強度を備え、私たちが実際に座ることのできる椅子が完成。「半分は人がつくり、半分は自然がつくる」......なんとも吉岡さんらしい発想。

kawakami2.jpg展覧会最終日の1月18日に撮影した、水中内の「ヴィーナスーー結晶の椅子」。座面もアームも背も、どれも厚みが増している。力強いかたちに魅了されてしまう。

展覧会では、椅子の制作プロセスを3段階で見せようと計画。結晶というのは、環境を整えてあげさえすれば、どんどん育っていく。しかしその一方で、思い通りのかたちにはなかなかならない、実にセンシティブなもの。
そこで会場の水槽内では、あえて「成長を押さえる」状態にして、プロセスの途中段階を披露することにした。

けれども、自然の力ってすごい。水槽のなかでゆっくりと、じっくりと、結晶が育っていったのだ。水槽の底には結晶の層ができ、水中に雪が降り積もったかのようだ。

kawakami3.jpg


kawakami4.jpg


じつは予期せぬ状況は、展覧会が始まってすぐ、起こっていた。

「......吉岡さん、水槽の内側に......なんだか結晶がついちゃってますよ......!」
「おもしろいから、そのままにしておきましょう」

kawakami5.jpg水槽内で目にできた自然の表現。

そう判断した吉岡さんが、本当にすごい。予想していなかった状況を楽しむかのように、変化/変容を受け入れたのだから。

そこから、さらにさかのぼること1年前。「僕は結晶の椅子をつくります」と吉岡さんの「決意」を耳にした準備段階のとき......。まだ見ぬ「結晶の椅子」に大きな期待を寄せながら、どうなるのかは全くわからない状況にドキドキしていた自分を思い出した。

「万が一、開幕までに結晶が育たなかったらどうする? カラの水槽を展示できないし、ええい、そのときにはワニでもいれちゃう?!」(笑)などと私は考えたりもしたのだった。杞憂とはまさにこのこと......。

実際は大違い。カラの水槽どころか、空間全体が楽しい実験室のようになった。
展示作品が変容してく様子に、今度は、嬉しい「ドキドキ」の日々だ。(吉岡さんのデザイン活動もきっと、こんなふうに実験を繰り返す毎日なのでしょう)

kawakami6.jpg音楽で「絵」を描く。水槽内にシューベルトの交響曲『未完成』を流す。それを「聴いた」結晶によって表情豊かな一枚の「絵」が描かれていった。これは10月の様子です。
photo: Masaya Yoshimura

未知の世界、予期せぬ現象の連続でもある自然の世界。私たちの想像をこえた神秘的で不思議な自然の光景が、私たちの心に響くのはなぜ? 
そのように「心に響くもの」を、デザインでは、どのように実現できるのだろう? 
こうした問いは、展覧会が閉幕した後ももちろん続いていく。

出展作家のひとり、デザイナーのロス・ラブグローブ氏が、会場で語ってくれた言葉が印象的だった。「デザインは、いま、"感情"を必要としているんです」。

吉岡さんが会場で語ってくれた言葉にも、印象的なものがいくつもあった。
「デザインというのは、色やかたちをつくって完成......というのではなく、それに触れた"人の心"によって完成するものではないかと考えているんです」。

心によって完成するデザイン。大切なことがたくさん、この言葉には含まれているように思う。

kawakami7.jpg「このまま育てると、この椅子はどうなってしまうの?」と思いながら撮影した、展覧会最終日、閉幕時の会場です。


21_21 DESIGN SIGHT
http://www.2121designsight.jp/

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