2009.05.27
ブダペスト散策。
週はじめの動物園です
ブタペスト市内、アール・ヌーヴォー建築巡りに出かける前に、市民広場の一角となる動物園にも行ってみることにしました。初めて滞在する街では、こうした身近な場所の様子も気になります。

滞在していたホテルに近い地下鉄2号線の駅(写真上)から乗り継いで、1号線へ。観光客の利用も多い1号線では、タイルで駅名が表示される(写真上2・3枚目)など、伝統の街の趣がたっぷりです。
実はブダペストの地下鉄1号線は19世紀末に開通。ロンドンに次ぐ歴史的なもので、ユーラシア大陸のなかでは最も古いもの。電気地下鉄としては世界一の歴史を誇り、ブダペストの街(ドナウ河岸、ブダ城地区、アンドラーシ通り)とともに世界遺産にも含まれているほどです。
地下鉄から地上に出て、市民広場を右手に、わき目もふらずに動物園へ。信号待ちで目があった、道路の向こう側の男の子。あれこれ変な顔をつくりながら、話をしたそうにしていましたが、それにも動じず、進みます(笑)。
目あての動物園です。前回紹介した応用美術館ではインドの模様やムガール様式などが目にできましたが、動物園のエントランスでも異国情緒溢れるゾウたちが迎えてくれます。美は細部に宿る、もの。描写された南国植物と果実、ウィリアム・モリスの壁紙にも負けてはいない......?!

気温がどんどん上がり、すでに30度近い月曜の午前。幼稚園や小学校など、子どもたちのグループが大半でした。おやつの時間か、一斉にバナナを食べていた子どもたち。おばあちゃまと一緒の、かわいらしい女の子。動物園のデザインウォッチ以前に人ウォッチ状態ですが、子どもたちの揃いの洋服は、赤や黄色など鮮やかな色が主流のよう。

ですが......月曜日だからか、真夏並みの気温ゆえか、早くもランチタイムに入っていたのか、肝心の動物たちがあまり見あたりません。動物園の建築見学と考えれば目的達成ではありますが......。散策気分で、園内を楽しむことにします。

「あ!」。興奮して目を向けると、動物園の人だったりします(それでも子どもたちはみな楽しそう)。動物の姿を目にできると、ほっとします。暑さのなか、プロ意識(?)で人前に颯爽と登場していたのは、白クマ2匹。子どもたちだけでなく、大人にも人気でした。

愛すべき動物園の光景にすっかりなごんでしまいますが、このコラムが「デザインジャーナル」だったことを思いおこし(!)、動物園そのものの設計について、最後に添えておきましょう。ここから急に文字が多くなりますが、どうぞお許しを......。
動物園の完成は1911年。大部分の設計を手がけたのは、気鋭の建築家、コーシュ・カーロイとズルメツキ・デジェー。ブダペストで購入した建築ガイド『世紀末建築』に記されていた解説によると、学業を終えたばかりだったふたり、「ヨーロッパ各地の近代的な動物園をくまなく調査」、そのうえでこの動物園の設計を行いました。
当時の趣は今や断片的に残っている状況ですが、「それぞれの動物の生まれ故郷の環境を表わす」とのコンセプトのうえ、異国情緒もたっぷりに、まさに建築万国博覧会状態だったようです。
残念ながらここには写真がないのですが、ゾウ舎は前回コラムで触れた建築家エデンもご愛用の、ジョルナイ工房による動物の頭で彩られたもの。ゾウ舎をデザインしたノイシュロス、冒頭で紹介した動物園の正門を手がけた人物でもあります。
園内奥の建築を鑑賞し、ゾウの「写真撮影ポイント」も目にしながら、さて、市内の建築巡りへと出かけましょう。ブダペスト、さらに次回に続きます。

川上典李子
ジャーナリスト
Noriko Kawakami, journalist
デザイン誌『AXIS』編集部を経て、94年独立。ドムスデザインアカデミーリサーチセンターの日伊プロジェクトへの参加(1994-1996年)を始め、デザインリサーチにも関わる。現在は、「21_21 DESIGN SIGHT」のアソシエイトディレクターとしても活動。主な著書に『Realising Design』(TOTO出版)など。