2009.07.13
オランダでも熱いビエンナーレ。
アーネム・モード・ビエンナーレ
ここのところトランジットのための通過が続いていたオランダ、スキポール空港......。デザイナーの取材や打ち合わせの仕事で、半年ぶりにアムステルダム市内に滞在できました。
「普段はこれほど暑くないのよ......」。会う人が必ずそう口にしていた猛暑のオランダ。
ダッチデザイナーが結集して歴史的建築物をリニューアルした「ロイドホテル」にまずは落ち着き、ベッドのすぐ後ろになぜかバスタブが置かれている赤い部屋(!)で、「ただいま!」とこの街の知人たちにメールを送ります。デンボス、ティルバーグ、アーネム......オランダ滞在のはじまりです。
アムステルダムから南東へ、牧歌的な景色を楽しみながら、電車で1時間と少々......。アーネムの街で6月6日から1カ月間開催されていた「Arnhem Mode Biennale(アーネム・モード・ビエンナーレ)」も今回の滞在目的のひとつでした。
昨年のアーネム滞在時に手にした資料が気になっていて、「この目で確かめなくては」と思っていたもの。牛たちがのんびり寝そべる広大な公園のすぐそばのホテルにチェックインし、街の散策もかねて展示の取材へ。
アーネムの中心街を彩るビエンナーレの旗。
この街の魅力を教えていただいたアーネム在住のアーティスト、Miyuki Okuyamaさん。写真作品に意欲的に取り組んでいます。隣はビエンナーレのキャラクター。本ビエンナーレのアーティスティック・ディレクターであるピート・パリ氏に聞くと、「このキャラクターはアーネムに暮らしていたことのあるオードリー・ヘプバーンのイメージを重ねたもの」だそう。
アーネムの街は、アレクサンダー・ファン・スロベ、ヴィクトール&ロルフらを輩出したArtEZ アーネム芸術アカデミーがあることでも知られています。また、市内の一角では、デザイナーやスタイリスト、フォトグラファーなど、ファッション、クリエイティブ関係者のスタジオを誘致するストリート計画も進行中。「モードで街を盛り上げよう」という意気込みが、このビエンナーレの背景にはありました。
その空気を感じながら、ビエンナーレのプログラムのひとつ、ArtEZ アーネム芸術アカデミー ファッションデザイン学科のグラデュエーション・ショーへ。ビエンナーレ会期終盤のメインイベントとして、毎回、盛り上がる催しです。アカデミーで教鞭をとっている世界的なイラストレーター、ピート・パリ氏(アーネム・モード・ビエンナーレのアーティスティック・ディレクター)の監修のもと、ショーが華やかに開幕しました。
1〜3年生の作品もあわせて披露されるArtEZグラデュエーション・ショーから。今年の卒業生は20名。力作が次々と。
フィナーレは大変な盛りあがり。異例の暑さのなか、拍手、拍手、拍手......!
注目されているArtEZのファッションデザイン学科。メディアも駆けつけます。
ショーが行われたのはビエンナーレのメイン会場となっていた教会内の特設会場ですが、メイン会場はさらにこの教会と隣の市庁舎の一角にも登場。「サイトスペシフィックなアート作品?」という雰囲気に足場が組まれ、市内を一望できる通路を進みながら展示を目にしていくというものです。
「ファッションは私たちに身近なもの。ファッションに興味がなかった人にも、様々なところから興味を持ってもらいたい」とパリ氏。彼を中心に詰められた今回のテーマは、「SHAPE」。そのメッセージが9つのブースで展開されていました。
こちらは教会内の様子です。テーマにあわせて選択された作品だけでなく、今回のビエンナーレのために新たにデザイナーが手がけたファッションも多数。
日本からはコズミックワンダー(写真)、リトゥンアフターワーズが参加。リトゥンアフターワーズビエンナーレのオープニングとなる6月にショーも行っています。
教会と市庁舎がある一角に足場が組まれ、家のかたちの展示空間を巡っていくというもの。「普段は体験できない視線で街を眺めてほしい」。今回で3回目の開催ですが、街の中心地を使った大掛かりな試みは初めてのこと。
展示空間から、こちらはコムデギャルソンの展示風景。「Amazement(驚き)」のテーマのもと、「ファンタジー」としての紹介。
生きているかのようなリアルな肌......このボディも来場者の話題に。
人口14万人という穏やかな街、アーネムに、ヨーロッパ各地からファッション関係者も訪れた1カ月。関係者が日々議論を交わしてきたという熱い準備のうえで開幕した今年のモード・ビエンナーレ、盛り上がりのなか、7月6日に閉幕しました。
さて、アーネム、ファッションといえば、美人双子のファッションデザイナー、Spijkers en Spijkers(スパイカーズ・アン・スパイカーズ)もArtEZの卒業生。スタジオをこの街に構えています。滞在中に彼女たちのスタジオも訪ねました。次回のコラムで紹介しましょう。
photo (C) Noriko Kawakami
川上典李子
ジャーナリスト
Noriko Kawakami, journalist
デザイン誌『AXIS』編集部を経て、94年独立。ドムスデザインアカデミーリサーチセンターの日伊プロジェクトへの参加(1994-1996年)を始め、デザインリサーチにも関わる。現在は、「21_21 DESIGN SIGHT」のアソシエイトディレクターとしても活動。主な著書に『Realising Design』(TOTO出版)など。