2009.07.15
アーネム拠点のデザイナー。
スパイカーズ・アン・スパイカーズ
アーネム滞在中のある日、ファッションデザイナー、Spijkers en Spijkers(スパイカーズ・アン・スパイカーズ)のスタジオを訪ねました。
熱帯地方のスコールかと思うほど、激しい雨が突然降り出した午後。アポイントメントの時間には小雨になり、ほっとしながらの訪問です。
迎えてくれたのは双子の姉妹、トゥルスとリット。二人とも本当に美しい。
「アーネム芸術アカデミーのグラデュエーション・ショーは今日、見に行くところ。今年もとても楽しみだわ!」。フレンドリーな対応と笑顔に、大雨でダークになっていた気持ちが一気に軽やかになりました。
「服は建築と同じ。構造そのものに興味がある」と語るトゥルスとリット。その視点を活かしてデザインした自作の服を、この日もすてきに着こなしていました。
スタジオの一角です。ミニマムなインテリアながらも、アトリエアのライヴ感や二人の手づくり感に満ち、居心地よい空間。
二人がプロとして活動を始めたのは、2000年、アーネム芸術アカデミー(ArtEZ)の卒業と同時でした。ブランドを設立して作品の発表を続けながら、2005年(2006年春夏コレクション)、ロンドンコレクションでのデビューも果たします。
ArtEZ時代の話から、まずは聞きました。
「ファッションを学ぶのなら、ArtEZのファッションデザイン科がヨーロッパで一番だと信じていたわ。そこで、試験に挑戦してみようと思ったの」。
「双子でいつも一緒だから、本当は一緒に試験を受けたかったけれど、試験はもちろん別々に受けないといけないわよね。10数名の入学枠に二人そろって受かることができて、本当によかった」。
スタジオには二匹の犬。双子ではないそうだけれど、スパイカーズ・アン・スパイカーズのスタジオにぴったりの光景。二人が登場すると、二匹ともすぐに寄ってきて、思いきり甘えていました。
彼女たちのスタジオ周辺の路地の光景。アーネムの街の静かな一角です。
「授業では、世の中の動向にも敏感で、コンセプト重視の厳しいカリキュラムだったわ。生徒ひとりひとりの個性を引き出そうと、先生も情熱的だったわね」。
二人が交互に、しかも次々と語ってくれます。双子の取材は私にとって初めてのこと。彼女たちの会話のみごとなテンポに驚かされながら、話を続けていきました。
「とにかく一生懸命やらないとついていけなかったことを、覚えているわ」。
「あるとき先生が、『皆のなかで、どの作品がすばらしいかを述べなさい』というものがあったりもしたわね。クラスメートの作品について、皆の前ではっきり意見を言わないといけないなんて、びっくりしたけれど......」。
そのようにして学んだことをベースに、自分たちのブランドを成長させてきたのです。そこには常に「服の構造」についての考えがあります。
「きょう私は3Dのコンポジションを着る」というのが最初のコレクションだったわ。もちろん服なのだけれど、立体としてどう成立するのか。彫刻や建築にも似た考えも持っていたの」。
2009/2010秋冬コレクションから。続く写真も最新コレクション。
Photo: Chris Moore, Courtesy of Spijkers en Spijkers
Photo: Chris Moore, Courtesy of Spijkers en Spijkers
Photo: Chris Moore, Courtesy of Spijkers en Spijkers
「すぐれたデザインというのは、時が経過しても変わらない良さがあるもの。アーネム・モード・ビエンナーレは2年に1度の開催だけれど、私たちは、実は、2年の間隔も短いのではないかと思うほどよ......。一方、ファッションの世界には、ファッションの世界独自の特色がある。そうしたことも理解しながら、自分たちの世界を追求したい」。
「自分たちの表現では、一貫して持ち続けるイメージがあるわ。たとえば1920年代という時代。そのうえで、興味のある女性をミューズとして思い描いているの」。
アーネム・モード・ビエンナーレ会期中、メイン会場内で紹介されていたスパイカーズ・アン・スパイカーズの作品。2009年春夏コレクションを交えたインスタレーション。
魅力たっぷりの二人。彼女たちの写真をもう1枚、掲載しましょう。
「大きな肩パットにしなくたって、女性のエネルギーを表わすことのできる服がつくれると思う。着る人が自信を持つことのできる服、その人ならではの個性を表現することのできる服といったものを、現実にしていきたい」。
「いい日だからその服を手にとる、ということもあるかもしれないけれど、『その服を着たから、いい日になった』というのがすてきじゃないかしら?」。
彼女たちが目ざす世界について、改めて語ってもらえることができた貴重な時間。二人の今後の活動が、これまで以上に楽しみになりました。
川上典李子
ジャーナリスト
Noriko Kawakami, journalist
デザイン誌『AXIS』編集部を経て、94年独立。ドムスデザインアカデミーリサーチセンターの日伊プロジェクトへの参加(1994-1996年)を始め、デザインリサーチにも関わる。現在は、「21_21 DESIGN SIGHT」のアソシエイトディレクターとしても活動。主な著書に『Realising Design』(TOTO出版)など。