2009.10.06
自然の光と色の喜びが重なる、
ルイス・ポールセンの新作
ノーザン・ライツと耳にするたびに、頭のなかに広がる風景があります。数年前の夏、北欧滞在中に目にした、木もれ陽。葉と葉の間を抜けた陽ざしが、丸いスポットライトさながらに通りを照らしていたのでした。美しい音楽を生み出す音符のように見え、いや、光そのものが音楽でした。私の旅の記憶はいつも光と一緒ですが、なかでも強烈に、全身で覚えている風景です。
「今度の週末はアーキペラゴ巡りよ」。その日会っていたデザイナーの言葉が、さらにその光に重なります。「群島」を意味する言葉、アーキペラゴ。どこか呪文のような響きの言葉を口にするたびに、きらめきながらゆれ動く澄んだ水面を目にしている気分にもなります。
Photo(c) Noriko Kawakami
グンナール・アスプルンドの設計で世界遺産にも登録されている「森の墓地」(ストックホルム)前で。7月の木もれ陽です。
「ノーザン・ライツ。スカンジナヴィアのランドスケープに見いだせるカラー・スキームをこのように名づけ、空、浜辺、あるいは野原の花々といった自然界のカラフルなニュアンスを、美しい、デリケートなシェードにくっきり表現しようと試みました」。
1874年にデンマークに生まれた照明メーカーの老舗、Louis Poulsen(ルイス・ポールセン)から、「Toldbod(トルボー)120」のニュースが届きました。2002年に開発された「トルボー ペンダント」のミニサイズとして開発された新製品です。
まずは「トルボー」そのものが同社には重要な存在。というのも、1925年に始まった同社とのコラボレーションを、他界する1967年まで続けたデンマークの巨匠、ポール・ヘニングセンが1960年代にデザインした照明をモティーフに開発されたものであるから。ルイス・ポールセンの伝統や思想、デザインのパイオニアの存在、現代の軽やかな空気が、トルボー120には込められているのです。
Photo: Courtesy of Louis Poulsen(続く写真すべて)
スカンジナヴィアの自然の表情。そのイメージが照明デザインになると......。
「トルボー120」から、「ブラック・ベリーズ」。
直径12cm。可愛らしいサイズにまとめられていることに加え、もうひとつの大きな特色がカラーリング。キャストアルミ製のシェードの塗装には5色が用意され、それぞれにカラフルなテキスタイル・コードが組み合わせられています。
「コードにも色」という発想に拍手を送りましょう。普段はあまり目が向けられない部分も強い個性を放っているということ。シェードの色との大胆な対比も楽しめます。花は開いた花の部分だけが美しいのではなく、伸びた茎や葉もまた美を内包しており、全体として美の存在を示してくれるもの。このトルボーでは、コードもまたデザインの大切な要素であることを見せてくれました。
こちらは「クラウディー・ホワイト」。いずれもデザインはルイス・ポールセン・ライティング。光の質そのものにも細心の配慮が。内部にマット仕上げの反射板が組み込まれ、直接光と柔和な反射光で照らします。ハロピンランプ フロスト40W使用。
ミスティー・ブルー、ブラック・ベリーズ、イエロー・ブロッソム、クラウディー・ホワイト、グレイ・サンダー。シェードの色彩名そのものが、まるで詩のようです。
ミスティー・ブルーは水色シェードにパープルコード。ブラック・ベリーズは黒シェードにグリーン・コード。グレイ・サンダーはグレイシェードにイエロー・コード......。
色のバリエーション。上からイエロー・ブロッソム、ミスティー・ブルー、グレイ・サンダー。各28,350円。コードにはベーシックなホワイトコードも。用意されているシェードの色とカラーコードの色を自由に組み合わせることもできます(有料)。
フォルムはシンプルに。様々な空間に調和するものとしてまとめられながら、新鮮な魅力が宿っていること。多くの人にすでに愛されているデザインに敬意を払いながらも、その品の特色が丁寧に掘り下げられていること。デザインに注がれるつくり手の愛情と、同じだけの勇気。そのことを改めて教えてくれる、愛らしい存在。
スカンジナヴィアの空、水の輝き。樹々の緑、秋から冬へと移りゆく季節のふんわりとした光。冬の空、雪や氷のきらめき......。様々な風景の色を室内にとり入れるような「トルボー120」。日本に到着したばかりの品々を前に、私は、かつて出会った木もれ陽を改めて思いだしているところです。
シェードとテキスタイル・コードの組み合わせで、幾種類もの花が並んだよう。
問い合わせ先:タルジェッティ ポールセン ジャパン(TEL 03-3586-5341)
Louis Poulsen released their new product Toldbod 120. The diameter of its lamp shade is 12cm, and 5 colors are prepared for the shade; Misty blue, Black berries, Yellow blossom, Cloudy white and Grey thunder.
This product exhibits simple design of shape and beautiful variation of colors for the shades. The design of Toldbod 120 makes me think of the beauty of nature in the northern countries. We can enjoy the coordination of the colors between cord and shades. They look like beautiful flowers.
text by Noriko Kawakami
川上典李子
ジャーナリスト
Noriko Kawakami, journalist
デザイン誌『AXIS』編集部を経て、94年独立。ドムスデザインアカデミーリサーチセンターの日伊プロジェクトへの参加(1994-1996年)を始め、デザインリサーチにも関わる。現在は、「21_21 DESIGN SIGHT」のアソシエイトディレクターとしても活動。主な著書に『Realising Design』(TOTO出版)など。