2010.02.15
早春に出会う白トンボ。
陶芸家 岡崎裕子さん個展
白釉で焼かれた、しっとりとして、どこか躍動的でもある器の数々。30代の陶芸家、岡崎裕子さんの個展が、南青山のセレクトショップ「PLAIN PEOPLE」で2月19日に開幕。1週間の会期です。
料理好きの作家がつくる器は、見ているうちに料理を盛りたくなってくる。お酒が好きな作家の手から生まれるぐいのみは、いつも楽しい。陶芸作品展の楽しみは、会場に集合した作品から、作家その人が静かに伝わってくること......。

Photo © Yuko Okazaki
自然の恵みを味わうのにぴったりの皿や器たち。
昨年の初個展以来、注目を集めている岡崎裕子さんも料理が得意。ご自身のホームページにも手料理がしばしば登場します。生活を楽しむ達人である岡崎さんが今回の個展で紹介する作品も、日々の時間を楽しむものばかり。
そしてそれぞれに「トンボ」の姿が......。トンボは岡崎作品の醍醐味です。
たとえば双耳のスープカップ。左右の持ち手がなんとトンボ......!トンボの姿から広がるように描かれる美しい曲線も、独自の世界を醸しだします。
これらのトンボ、彼女が陶芸を学んでいたときの風景につながる大切なモティーなのだそうです。東京を離れ、茨城県笠間市で森田榮一氏に師事することを決めた岡崎さんが、その修行時代に目にした全身黒の羽黒(はぐろ)トンボ。「当時の心象風景とあいまって、とても印象的で、自作の器につけはじめたのがきっかけです」。岡崎さんは言います。

Photo © Yuko Okazaki
トンボが持ち手のコーヒーカップもありました。このみずみずしい感覚が魅力です。
「羽黒トンボのシャープで美しいフォルムとデザインを目のあたりにした時には、自然界がうみだすデザインを改めて実感しました。以来、敬意を持って自然と向き合うようになりました。また、私はガレなどのアールヌーヴォーの作品が大変好きで、自然のモティーフの立体的な表現を陶器で実現したいという思いもありました」。
今回の個展で特に多く紹介されるのは皿。小皿、盛り皿をはじめ、サイズや形も様々です。アクアパッツァ皿、長さ50cmもある大ぶりの皿も含まれています。他にはスープカップ、小鉢、サラダボール、片口なども。そして今回、岡崎さんのトンボはいつも以上に躍動的な姿を見せてくれます。そのことにもご期待ください。
白の釉薬の表情も岡崎作品の特色です。「しっとりした風合いでマットであること......白の質感にはいつもこだわっています。原材料の配合、窯の温度も工夫しています」。釉薬にはあえて硬く、とけにくいものを。それを高温で焼成することで、独特の風合いに。
個展ではトンボの器を中心に、モノトーンのシンプルな作品も紹介される予定。岡崎さんのホームページからも、個展に向けた準備の様子がうかがえます。
大らかな自然の魅力を感じさせてくれる岡崎さんの器の数々。丁寧に制作されてきた彼女の新作に、PLAIN PEOPLEではやく出会いたい。今週の私の大きな楽しみです。
photo: Koichi Noda
岡崎裕子さん。イッセイミヤケの広報を3年務めた後、笠間へ。陶芸作家のもとでの修行は4年半、続いて笠間市窯業指導所の釉薬科/石膏科修了と、陶芸をしっかり学んでいます。現在は横須賀の自宅兼工房で制作に励む毎日。最近ではクルマの広告に、美しき陶芸家として登場しています。活動の様子は http://yukookazaki.com/index.html。
Photo: Koichi Noda
個展の案内にあった写真がすてきでした。岡崎さんにとっては先輩陶芸家となる野田耕一さんの撮影。岡崎さんの世界が伝わってきます。
Yuko Okazaki Exhibition
2月19日〜2月25日
PLAIN PEOPLE/東京都港区南青山5-3-5 1F
11:00〜20:00(最終日は19:00まで)
TEL 03-6419-0978
Yuko Okazaki's solo exhibition will be held in the PLAIN PEOPLE, a boutique in Aoyama, from the 19th of February until the 25th of February. Okazaki was born in Tokyo and after working at ISSEY MIYAKE for3years in their PR department, she decided to learn ceramic art in Kasama, Ibaraki Prefecture, north of Tokyo. In 2007, she established her own studio in Yokosuka city, Kanagawa Prefecture, south of Tokyo. She held her first solo exhibition in Tokyo last year.
Her works include the unique motif of a dragonfly. When she was living in Kasama as an apprentice for a famous ceramic artist for four and a half years, she saw a beautiful black dragonfly. It left an impression on her, and since then, she has been looking on nature with her respect by taking inspiration from designs founds in nature. She also mentions about her favorite Art Nouveau works created by Charles Martin Émile Gallé and other artists that incorporated elements of nature. Okazaki started to try to create her own ceramic art conveying the motifs of nature around us. At her new exhibition in Tokyo, you can encounter a more dynamic and beautiful form of the dragonfly.
text by Noriko Kawakami
川上典李子
ジャーナリスト
Noriko Kawakami, journalist
デザイン誌『AXIS』編集部を経て、94年独立。ドムスデザインアカデミーリサーチセンターの日伊プロジェクトへの参加(1994-1996年)を始め、デザインリサーチにも関わる。現在は、「21_21 DESIGN SIGHT」のアソシエイトディレクターとしても活動。主な著書に『Realising Design』(TOTO出版)など。