2010.03.15
アレクサンダー・ファン・スロッベ。
ユトレヒトでの展覧会と新刊作品集
オランダ、セントラール・ミュージアムで、Alexander van Slobbe(アレクサンダー・ファン・スロッベ)の展覧会「Fashion for thought - Alexander van Slobbe」が開幕。あわせて『Alexander van Slobbe, and... and... and...』も発行となりました。
Orson + BodilやSOでおなじみのファン・スロッベは1959年、ロッテルダム生まれ。原宿にSOのブティックがあった時、某誌のオランダ・デザイン特集の仕事で、私も本人にお会いしたことがあります。探求の結果完成した服が、手にとり、身につける人々といかに直接的なコミュニケーションをとれるのか、その重要性を熱く語ってくれたのでありました。クールな表現の根底に宿る情熱を感じたことを、今も覚えています。 その後再会できたのは、一昨年の12月、アムステルダム「NL = New Luxury」のオープニングレセプションで。Orson + Bodilに加えてFrancisco Van Benthum(フランシスコ・ファン・ベンテム)のメンズラインも扱う同店。ファン・スロッベとは以前からプロジェクトを行っているイベントアーキテクチャーによる空間デザインはシンプルながらも躍動的で、邁進するクリエイターのエネルギーを改めて知る金曜の晩となりました。もうひとつ変わっていない、と思ったもの。それはファン・スロッベのオーラ......! ---- 阿部さん、「デザイン・ジャーナル」特派員となってくださり、ありがとうございます。セントラール・ミュージアムでは私も以前、ヴィクター&ロルフのすばらしい巡回展を楽しんだことがあります。ファッションに詳しいキュレーターがいるのですね。 (阿部さん)「美術館で今回の展覧会を見てきました。とても力強い展覧会です」
Photo: JR-X, orson + bodil, Spring/Summer 2009 and Autumn/Winter 2009/2010. 『Alexander van Slobbe, and... and... and...』より。Courtesy of valiz

Photo: Anuschka Blommers and Niels Schumm, orson + bodil, Autumn/Winter 2005.『Alexander van Slobbe, and... and... and...』(valiz)より。Courtesy of valiz.
今回の展覧会と作品集も気になるところです。その速報を、本コラムに2月に登場いただいたオランダ在住のデザイナー、阿部さやかさんにレポートしてもらいましょう。

---- 会場写真も送っていただき、ありがとうございます。阿部さんの写真を通して、「FiGARO・jp」の読者の皆さんにも会場の雰囲気を楽しんでもらえると思います。
「Fashion for thought」展、アレクサンダー・ファン・スロッベの今日に至る活動を一望できる内容なのですね。
「20年の活動の集大成で、彼の確固たる地位を強く感じさせてくれる展覧会です。ファン・スロッベはミニマリズムをテーマとする作品で知られていますが、会場では本人のコンセプトをわかりやすく伝えるアーカイブ的な展示を始め、彼のファッションを彫刻的な美しさとして表現する展示、さらにはそれらを『着る』という段階を示したボディーを用いての展示と、3つのセクションで構成されています」

セントラール・ミュージアム、展覧会会場より。Photo: Sayaka Abe
---- アレクサンダー・ファン・スロッベは、ファッションで有名なアーネムの芸術アカデミーの卒業ですね。1997年にはアーネム芸術アカデミーの講師にも就任し、彼に続くファッションデザイナーの育成にも力を注いでいます。
「はい。アーネムで彼が教えている学生たちの優秀作品も、展覧会には含まれているんです。あるいは服づくりを楽しめるワークショップも企画されています。ファッションを広く様々な人に楽しんでほしいと考える、ファン・スロッベらしい姿勢が伝わってきます」
「彼が大切にするデザイン哲学を振り返ると同時に、美を探求するコンセプトも映像から明快に伝わってきます。作品群は本当に独特な世界で、芸術作品のようだと思いました」
---- ああ〜、ユトレヒトの会場を見たくなってきました(笑)! では、日本にいる私たちも購入できる、新刊の作品集についても教えてください。
「『Alexander van Slobbe, and... and... and...』は、展示会内容と連動するようにまとめられているようです。彼のデザインプロセスを知ることができる写真が多数含まれているほか、作品コンセプト、ファッションショーの様子、さらにはアートとファッションの関係性に関する本人のエッセイやインタビュー、寄稿などによって構成されています」
展覧会会場には作品集の全ページを紹介するコーナーも。Photo: Sayaka Abe
---- ボリュームたっぷりの本だそうですね。
「304ページもあるんです。オランダを代表するデザイナーのひとり、ファン・スロッベの、20年にわたる業績がぎっしりと詰まっています。建築やプロダクトデザインなど、立体造形のミニマリズムにも影響を受けている彼の作品は、豊かなアイデアを背景に生み出される美しいものばかり。写真からも並外れた美的センスを読みとることができます」
---- あれれ、何種類もの表紙があるのですか......?!
「ステッカー仕立ての写真が一枚一枚、手で貼られていて、全部で9種類もの表紙が用意されているのです。グラフィックデザインはアムステルダム在住のMevis & Van Deursenによるものですが、このデザインにも驚かされました」
『Alexander van Slobbe, and... and... and...』(valiz)の表紙。Courtesy of valiz.
ステッカー状の写真が貼られた、一冊一冊が異なるアーティスティックな表紙。
---- 印刷で複数つくられる作品集でも、一冊一冊の個性を大切にしているのですね。服を生み出す「手」の重要性も伝えたかったのかもしれません。この表紙ひとつを挙げても、ファッション、クラフツマンシップ、アート、ヴィジュアル表現など、様々なものを結びつけながら活動を展開するファン・スロッベのメッセージを感じ、考えさせられます。
阿部さん、現地速報をありがとうございました。本コラムにまたぜひご登場ください!
Photo: JR-X, orson + bodil, Spring/Summer 2009 and Autumn/Winter 2009/2010. 『Alexander van Slobbe, and... and... and...』より。Courtesy of valiz
「Fashion for thought - Alexander van Slobbe」展は5月16日まで。
http://www.centraalmuseum.nl/
作品集『Alexander van Slobe, and... and... and』
http://www.valiz.nl/en/AlexandervanSlobbe
The long-awaited exhibition titled "Fashion for thought-Alexander van Slobbe" made a splash at the Centraal Museum in Utrecht, the Netherlands this February- and it is still going strong. Also, a book of Van Slobbe's work was published by valiz.
Ms. Sayaka Abe, a Japanese designer based in the Netherlands, took photographs of that exhibition especially for FIGARO・jp.
Abe describes that exhibition, "We can see 20 years' worth of his work, design philosophy, and his firm foothold as a fashion designer. In that museum, his works are exhibited in three sections: an archive-esque exhibition which introduces the thinking behind his most significant creations, a section exhibiting his fashion designs as structural beauties, and a section introducing his clothing on forms. I felt that these creations molded by his unique perspective are almost like works of art."
The contents of his 304 page book titled Alexander van Slobbe, and... and... and... is related to the contents of that exhibition, and it includes Van Slobbe's essays and interviews. The cover is made with several overlapping stickers of photographs of his clothing, and the publisher prepared nine uniquely-patterned, patchwork.
Through the exhibition and book, we are introduced to this versatile designer's 20 years of activity and his continued exploration of the relationship between fashion design and art, along with his quest for craftsmanship.
text by Noriko Kawakami
川上典李子
ジャーナリスト
Noriko Kawakami, journalist
デザイン誌『AXIS』編集部を経て、94年独立。ドムスデザインアカデミーリサーチセンターの日伊プロジェクトへの参加(1994-1996年)を始め、デザインリサーチにも関わる。現在は、「21_21 DESIGN SIGHT」のアソシエイトディレクターとしても活動。主な著書に『Realising Design』(TOTO出版)など。
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