TOPIC PATH
HOME
  >  COLUMN
  >  デザイン・ジャーナル
  >  アグリ&カルチャーツーリズム。民藝運動ゆかりの町の、山里で
アグリ&カルチャーツーリズム。民藝運動ゆかりの町の、山里で

2010.08.16

アグリ&カルチャーツーリズム。
民藝運動ゆかりの町の、山里で

「陶芸の里、益子町で農業と陶芸体験をしてみませんか。自分で播いて、刈って、打った"そば"を自分でつくったそば猪口(ちょこ)で食べる『益子そば物語』を催します」

夏の便り。今月末に第1回が予定されている催しの案内が、岡崎エミさんから。

1_100816kawa.jpg

2_100816kawa.jpg益子の風景。Photo © 2004 Yamasatonomegumi. All rights reserved. 写真提供:益子町役場産業観光課

『Living Design』編集長だった岡崎さんが、東京から益子の隣町に住まいを移したのは、1年半前。ソーシャルデザインの活動を行うstudio-Lのメンバーとして、現在は「地元」に関連する幅広い仕事をしています。

ソーシャルデザイン。まちづくりやコミュニケーションデザインをはじめ、社会的課題を克服することを目標に、関係や環境などをかたちづくっていくクリエイティブな活動を、岡崎さんは行っています。そう、デザインって、手で触れられる「物」の形や色を決めることだけじゃない。私たちが関わる様々なものごとを計画し、関係をつなげ、つくり。

そうしたソーシャルデザイン分野の編集や執筆もしている岡崎さん。このデザイン・ジャーナルで昨年紹介した「土祭(ひじさい)」では事務局として役場に勤務。いまは益子町商工会と一緒に中心市街地の活性化プロジェクトにも関わり、さらにボランティアとしてヒジノワという市民活動も。「東京にいたときと同じぐらい忙しい!」とか......。

そんなたよれる情報発信者から、8月、11月、12月、そばの種まきからそば打ちまでを体験できる「益子そば物語」のお誘いです。陶芸の町で自分だけのそば猪口をつくれるのも魅力のひとつ。地元産の食材でのバーベキュー、「さとかぐら」と言われる神楽の舞を鑑賞する会など、益子の人たちとの交流も楽しそう。

3_100816kawa.jpg松本三ノ宮神社のそばの道。Photo © 2004 Yamasatonomegumi. All rights reserved. 写真提供:益子町役場産業観光課

岡崎さんに改めて、この町の魅力を聞いてみました。

「益子の魅力は、豊かな里山に育まれた農と陶というふたつのカルチャーにあると思います。益子は、民藝運動の創始者のひとり、濱田庄司が窯をかまえ、創作活動をした場所として有名ですが、まさに民の芸術が息づいている場所です」

「陶芸はもちろん、各地域で受けつがれているお神楽や夏の祇園祭などの伝統文化、うどんやそばづくり、里のめぐみのキノコ狩りなどの、食を楽しむ文化も息づいています」

「昨年、益子町役場で働いていたとき、おすそ分けに野菜や自家製の梅干などをたくさんいただきました。お茶を飲むのは益子焼で、毎日食べるお米も地元産。そばの季節になれば、即席そば職人がゴロゴロいる環境に、しみじみ豊かさを感じました」

「移住を決意したときに自分自身も大きく変わったのだと思うのですが、腹を立てることがほとんどなくなりました。イヤイヤやっている仕事はひとつもないし、多少悩ましい事件がおきても、夜空の星を見て、静かな夜に包まれれば、ぐっすり眠れて、翌日はスッキリです。まあしいて言えば、車社会なので、帰りにビールを一杯、とはいかないのが唯一のストレスですね」

4_100816kawa.jpg 11月のツアーで体験できるそばの実の収穫。Photo: 益子町役場産業観光課

5_100816kawa.jpgそば打ち名人(有段者)の講習を受けながらそばを打つ。12月のツアーで。Photo: 益子町役場産業観光課

そうした岡崎さんお気に入りの町の空気を私たちも味わえる、今回の"そば"企画。彼女のことばを借りれば、「益子の自然や文化を楽しみ、かつ学ぶ、アグリ&カルチャーツーリズム」。役場が使っている「ラーニングバケーション」も興味をそそられることばです。

「そばも陶器も、どちらも益子の土から生まれるもの。イノシシだって益子の土から生えた植物を食べて育つわけですから、みんな土から生まれたものです。都会では土に触れる機会は極端に少ないと思います。でも、土がなくては、人類は生きることができない。土の恵みがどれだけすばらしいものか、五感で味わっていただけたらなあと思います」

「観光とは本来『光を観る』こと。その土地の光り輝く部分を見て英気を養うという意味だそうです。益子という場所は関東平野の淵に位置し、里山文化が今も息づく場所。平地で米や小麦、そばを育て、山でキノコを採って、冬にはイノシシも狩る(笑)! 」

「この土地に生きる喜びを目いっぱい地元の人たちが表現していますので、ぜひそのキラキラを感じとって、皆さんも元気になっていただけたら」

6_100816kawa.jpg益子焼の専門家から釉薬の指導を受けられる貴重な機会。Photo: 益子町役場産業観光課

7_100816kawa.jpg「ずぶ掛け」の技法も学び......。Photo: 益子町役場産業観光課

自然のなかでの「益子そば物語」。さらなる魅力はやはり、地元の人たち、のよう。

「今回のツアーの舞台は、観光客が多く訪れる中心部から南に行った、山本という地区です。山本地区は農業のさかんな素朴な山里。自然が豊かで、観光地とはまた違った益子が味わえるはずです」

「農家のおじちゃん、おばちゃんたちにとって、標準語はよそ行きの言葉。栃木独自のイントネーションをマスターすれば、あっという間にふところに入れるはず」

(なるほど)今回のツアーを一層楽しむコツまで教えてもらいました。

「ちなみに、皆がよく使う『だいじ』は、『大事』ではなく『大丈夫』の意味。ちょっと失敗しても、『だいじだぁ』と言ってくれますよ。『そうだそうだ』と相づちを打つときには、『ほだほだ』です! 山本のみなさんの温かな人柄も堪能してもらえるとうれしいです」

第1回は8月さいごの日曜日。『益子そば物語』は、山里の秋のはじまりとともに。

8_100816kawa.jpg明治初期に始まった山本太々神楽の鈴です。ふるまい酒やけんちん汁、そばチップを味わいながらの神楽鑑賞は11月のツアーで。Photo: 益子町役場産業観光課

「益子そば物語」〜益子ラーニングバケーション〜
(3回連続。1回のみ参加もOK)

8月29日(日)「そば播きと陶芸体験(そば猪口づくり)」
そばの種まき体験後に地元農家と一緒にバーベキュー

11月14日(日)「そば刈りと陶芸体験(絵付け)」
そば刈り&リンゴ狩り。夕方には山本地区に伝わる「山本太々神楽」鑑賞

12月12日(日)「そば打ちと自分で打ったそばに舌つづみ&交流会」
地元食材の"しし鍋"と"どぶろく"で農家との交流会も

プログラム詳細は http://www.town.mashiko.tochigi.jp/e08.html
参加費/3回連続:大人10,000円、1回参加:大人3,500円
(3回参加者には"自分でつくったそば粉"のプレゼントつき)

問い合わせ先/事前に参加申し込みを
(平日)益子町産業観光課 TEL 0285-72- 8846
(土日祝)山郷のめぐみ  TEL 0285-72- 9777

PREV  |  NEXT >
2010.08.16  |  CULTURE