2008.11.28
デザイナーの友人たちも参加します。
バーンロムサイ「チャリティー・ベア」
タイ語で「ガジュマロの木の下の家」を意味する言葉、「バーンロムサイ」。
その名がつけられた「家」が、タイ、チェンマイにある。両親をエイズで亡くし、さらにHIVに母子感染している子どもたちの生活施設で、1999年12月に開設された。
「フィガロジャポン」でも以前、バーンロムサイの子どもたちの想像力豊かな表現の数々を紹介したことがある。編集部の岸井千さんと取材した、子どもたちのキラキラ輝く瞳とパワーは今も忘れない。そのときに購入した子どもたちの絵やサンタクロース(たぶん!)やカメの愛らしいオブジェは、その後、私の仕事場を彩ってくれている。
このバーンロムサイの代表を務め、子どもたちの「おかあさん」は、名取美和さん。私が『AXIS』というデザイン誌の編集部にいたとき、編集部のあるAXISビル内にアンティークの品々を扱う店を経営されていた。かっこいい名取さんのお話を聞きたかった私は、編集部からひそかに抜けだしては、あるいは「打ちあわせ」と理由をつくっては、名取さんのもとに足しげく通っていた。
その名取さんから連絡をいただいたのは、今年の夏。
12月、アクシスギャラリーで、「アンダーザツリー展 『10000匹のチャリティー・ベア ----僕たちの伝えたいこと----』展を予定しているという。
「チャリティー・ベア」は、バーンロムサイの活動の大切なひとつ。タイのHIV感染女性らがつくったかわいらしいクマのぬいぐるみに、ボランティア参加者が、衣服などの装いを自由に施す。多くの人々の参加によって完成したクマたちは展示、発売され、施設の運用資金となっている。
ボランティア参加してくださる人は? と思い、周囲のデザイナーたちに声をかけると、嬉しいことに多くの方から参加への快諾をいただいた。仕事で忙しい皆が、心のこもるクマをつくってくれたことには、ただただ感激。その気持が嬉しい。
力作すべてを紹介できないのは残念だが、いくつかの写真を紹介したい。
いつもの活動でも、「その物を使う"誰か"のために」、丁寧な活動をしているデザイナーばかりだけに、それぞれに趣向が凝らされたクマたちが誕生した。どのクマも生き生きしている。
ロンドン在住の安積朋子さん、アラキミドリさん、富士フイルムのデザイナーであると同時に自身のプロダクトレーベルも持つ片山典子さん、21_21 DESIGN SIGHTの「チョコレート」展にも作品を出展してくれた、セイコーウォッチの松江幸子さん。「実は手芸が大好きだった」ということを教えてくれる人も何名か......。
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先日の「東京デザインタイド」でも注目されたデザイナーも多くいる。倉本仁さんは奥様の倉本幸重さんと参加、ライティングデザイナーの谷田宏江さん、インテリアデザイナーのナツメトモミチさん。磯野梨影(イソノリエ)さん、松本直子さん、井上佐枝子さん、赤羽絵美さん。ISSEY MIYAKE meのウィンドーディスプレイを手がける田宮奈呂さんや大類尚子さん......。
私の尊敬する巨匠デザイナー、故エットレ・ソットサス氏はかつて、「愛する誰かに一輪の花を贈る気持ち」が「デザイン」という行為には大切であることを教えてくれた。お会いするたびにそのことを口にしていた。「花を贈られた人はきっと微笑むことだろうね。私はその微笑みを見たいだけなんだ」とも......。
今回のクマに重ねられた皆の心と同じ、つくり手の思いが込められたデザインの実現は決して無理なことではないはずだ。そうしたデザインの可能性を、私はこれからも信じていたい。
12月、1万匹のクマに会いに行かなくては。
バーンロムサイの詳細は
http://www.banromsai.jp/info.html
「アンダーザツリー展『10000匹のチャリティー・ベア
----僕たちの伝えたいこと----』」
12/12〜12/21、アクシスギャラリー
http://www.axisinc.co.jp/
川上典李子
ジャーナリスト
Noriko Kawakami, journalist
デザイン誌『AXIS』編集部を経て、94年独立。ドムスデザインアカデミーリサーチセンターの日伊プロジェクトへの参加(1994-1996年)を始め、デザインリサーチにも関わる。現在は、「21_21 DESIGN SIGHT」のアソシエイトディレクターとしても活動。主な著書に『Realising Design』(TOTO出版)など。