2008.12.04
パトリック・ソダースタム。
東京にて、作品制作中!
「コンセプト・デザイン」。2005年の2月、ストックホルム国際家具見本市を取材していたとき、デザイン関係者たちから、興味深いその言葉を聞いた。
市内で催されていたデザイン展のディレクターは、こう語っていた。
「この国のデザインは、変化のただなかにあるのですよ」。
「社会背景をふまえながら、『ものの意味』を掘りさげる若手が増加しています」。
スウェーデンあげてのデザイン・イヤーだったこの年、まずは国立美術館で行われていた展覧会が「コンセプト・デザイン展」。アート公募展となるリリエヴァルクス美術館の「Spring Salon」も、このときばかりは「工芸、デザイン」を募り、しかも展示作品はどれもコンセプチュアルだった。「コンセプト・デザイン」はおもしろいぞ。直感した。
メッセージに満ち、柔軟な表現に挑み続ける、そうしたスウェーデンの若手のなかでも、話題のひとりが、ファッションデザイナー/アーティストのパトリック・ソダースタムだ。(スウェーデンでは自身を「デザイナーでありアーティスト」と称する若手が多い)
NIKEのシューズやポスターなども手がけているパトリック。彼自身のコンセプトが強く表われる作品にもNIKEが登場。「The art of football」、2008年。
「時に驚くほどヴァイオレント」。彼の活動をこう紹介する一文を読んだこともある。
そう、彼の活動は、「北欧」と耳にして多くの人がすぐにイメージする、"やさしくて穏やかで温かな"「北欧デザイン」とは、だいぶ違っている。
1973年生まれ。テーラードを学んだ後、フセイン・チャラヤンも学んだ英国の名門、セントマーティンズへ。パトリック自身のコレクションも発表しているが、「アゲインスト・ファッション」(パトリック談)という、ゆるぎない考えのうえで実現される、衣服の表現なのだ。さらにはイラスト、写真でも活動し、こちらもすでに評価を得ている。話題のクリエイターは、フットワークも軽やかに、パワフルな活動を展開中なのだ。
そのパトリックが再び来日。トーキョーワンダーサイト青山:クリエーター・イン・レジデンスに1カ月ほど滞在し、リサーチと制作に没頭しているという。
さっそく、彼の「東京スタジオ」を訪ねてみることにした。
トーキョーワンダーサイトのスタッフ、星野美代子さんと打ち合わせ中。
デスクトップのコンピュータのほかに、ミシンや布地などが机の上にところ狭しと置かれているのが、パトリックらしい。床には制作中の衣服の型紙も置かれている。立ったままでの作業スタイルをとる彼は、椅子を使わない。ミシンもコンピュータも立ったまま使う。そうやって深夜まで作業をしている。
部屋の壁を埋めるのは、ランダムに貼られた付箋紙だ。アイデアの断片は気になるところだが、残念ながらスウェーデン語ばかり。英語に言いかえてもらおうと試みても、どうやら秘密らしい......。

部屋の両壁には、「大切な考え方を示すもの」が、向きあうように掲示されていた。
ひとつがストリングス・アート(糸で描いた絵)で、「ひとつひとつの発想がつながっていく様子を表わすもの」だからだそう。もうひとつは、「世の中のさまざまな次元」を示すという、白い紙を折り、立体化した「白いキャンバス」。忘れてならない大切な「考え方」を移動先のスタジオにも掲示しておくなんて、なんてまじめな性格なのだろう。
「僕たちは、正直でクリティカルで、ややナイーヴなジェネレーションといえる」。
3年前、「コンセプト・デザイン」について彼が語っていた言葉をふと思いだした。

このスタジオで制作されたものは、渋谷の「トーキョーワンダーサイト アートカフェkurage」で紹介される予定だ。同カフェでは12月11日~13日の3日間、約20名のクリエイターの作品やグッズを展示、販売するイベント「Small Gallery Apartments」が開催される。12日の夜には、パトリックによるパフォーマンスも計画されている。
パフォーマンスでも大切な軸となっている、パトリックのコンセプトは、「TUC」。これは「The Upper Corner/(部屋の)隅の上方」で、「コーナー(隅)」は彼にとって重要な意味をもっている。
たとえば「リアリティ」と「ヴァーチャル」のように、「異なる次元」をつなぐものが「コーナー」。それも「白」であること! 白い壁の隅が重要、と強調するのだ。
すべてがまさに進行中。また、彼は今、東京でどんな「コーナー」を見つけているのだろう。「正直でクリティカルでナイーヴ」な彼のアンテナがキャッチしたものが何か、こちらもやはり気になるところ。
パトリック・ソダースタムの「TUC」。「白い壁の隅」がなぜ重要なのか、期待のクリエイターのメッセージは、「アドリブもあるかもね?! 」(パトリック)という、パフォーマンスに込められる。
・「Small Gallery Apartments」Slowpinkリニューアルイベント
12/11〜12/13、トーキョーワンダーサイト アートカフェkurage(渋谷)にて
12日19時〜21時の間にパフォーマンスを予定
http://www.tokyo-ws.org/shibuya/index.html
・パトリックについて知りたい人は
http://www.patriksoderstam.com/
川上典李子
ジャーナリスト
Noriko Kawakami, journalist
デザイン誌『AXIS』編集部を経て、94年独立。ドムスデザインアカデミーリサーチセンターの日伊プロジェクトへの参加(1994-1996年)を始め、デザインリサーチにも関わる。現在は、「21_21 DESIGN SIGHT」のアソシエイトディレクターとしても活動。主な著書に『Realising Design』(TOTO出版)など。