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早春の光のなかで、オトニエル作品を味わう

2012.02.19

早春の光のなかで、
オトニエル作品を味わう

きょうご紹介させていただくのは、原美術館で開催中の「ジャン=ミシェル オトニエル:マイ ウェイ」。Figaro.jpでもすでに「NEWS」に掲載されていたので、会場を訪れた読者も多いかもしれません。ここでは、原美術館から届いたすばらしい写真とともに、会場の様子をお伝えしましょう。

1kawakami0219.JPG原美術館外観。1930年代に建てられた邸宅が美術館に。庭に面したカフェもあり、ゆっくり過ごしたい美術館。私の大好きな場所でもあります。
Photos by Hirotaka Yonekura / Courtesy of Hara Museum of Contemporary Art

パリのメトロ、パレ・ロワイヤル駅を彩るアート作品『夢遊病者のキオスク』を手がけた人物としても知られるフランス人アーティスト、オトニエル。

今回の会場では、最初の展示からドキッとさせられます。かつて邸宅だった建物が特色の美術館で、ひとつめの部屋に登場するのがなんと「私のベッド」なのですから......!

人生に深く関わるベッドですが、突如、作家の身近なところに足を踏み入れてしまったような、そんな気分にさせられます。あるいはベッドは、「夢」の世界に近い場所。オトニエルの夢の世界へと誘う意味が、この展示に重ねあわせられているのかもしれません。

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3kawakami0219.JPG『私のベッド(Mon Lit)』(部分)2002年、©Jean-Michel Othoniel/ADAGP, Paris 2012

美しさにうっとりとすると同時にドキッとさせられるオトニエルの世界は、次の部屋でも続きます。艶やかで、どこかエロティックな作品が待っていたり......。

机を埋め尽くしたガラス器の作品は、メキシコ滞在時に制作したものだそうで、水中花さながら水の中に封じられたものたちは「奉納品」をモティーフにしたものだとか。

ミクロコスモスとも表現できるこの小さな「内的世界」は実にさまざま。星、心臓や目のようなもの、血のように赤いネックレスなど、なんと2000にも及ぶ造形が目にできるのです。作品名は『涙』。

4kawakami0219.JPG 『涙(Lagrimas)』2002年、©Jean-Michel Othoniel/ADAGP, Paris 2012

悲しみの涙。美しにものに触れたときの涙、祈りにも似た涙、それとも安堵の涙? 涙につながる多くの物語......人生って、とふと考えずにはいられないオトニエルの世界。

5kawakami0219.JPG『秘密の箱(Le Coffre à Secrets)』2007年、©Jean-Michel Othoniel/ADAGP, Paris 2012

6kawakami0219.JPG『無題 (Sans titre)』1997年、『ハーネス (Le Harnais) 』1997年、©Jean-Michel Othoniel/ADAGP, Paris 2012

7kawakami0219.JPG『ハーネス (Le Harnais) 』1997年、©Jean-Michel Othoniel/ADAGP, Paris 2012

イタリア、ムラーノ島の職人とともに制作されるムラーノガラスの作品は、庭の樹木にも設置されています。自然光のなかで作品を観賞でき、窓ごしに作品を楽しめるのも、ここ原美術館ならでは。「マイ ウェイ」とのタイトルのもと、より親しみを感じる空間で、1980年代に遡る作家の軌跡をゆっくり振り返ることができます。

8kawakami0219.JPG手前『黒は美しい(Black is Beautiful)』2003年、奥『ホワイトゴールドのマンドルラ(Mandorie d'Or Blanc)』2011年、©Jean-Michel Othoniel/ADAGP, Paris 2012

ところで、近年のオトニエル作品は、抽象的な造形が特色。館内では、鏡面ガラスのメタリックな輝きに包まれた作品も。

9kawakami0219.JPG『ラカンの大きな結び目(La Grand Double Nœud de Lacan)』2011年、©Jean-Michel Othoniel/ADAGP, Paris 2012

精神分析家のジャック・ラカンの理論と創造における「3つの作用」をモティーフとした作品もあります。ラカンによると、「ものをつくるには、ぶつかりあわずにまわっている3つの星のようなものが存在する」そう。「現実」「象徴」「想像」だとか。

10kawakami0219.JPG『2連ネックレス (Le Double Collier) 』2010年、『バナー No.1(Bannière nº1)』2003年、©Jean-Michel Othoniel/ADAGP, Paris 2012

11kawakami0219.JPG1964年、サンテティエンヌ生まれ。1980年より硫黄や鉛、蜜蝋といった可変性に富む素材による作品にとり組み、1993年からガラスの作品を発表。昨年にパリ、ポンピドゥセンターで開催された個展は20万人の来場者を記録し、話題に。今回の展覧会はその内容を原美術館の空間にあわせて構成したものです。©Jean-Michel Othoniel/ADAGP, Paris

「僕が好きなのはガラスの煌めきとはかなさ。それはまるで人生のよう」

そう語るオトニエルがさし出してくれる世界は、透明で、あざやかで。ガラスという素材の繊細さや脆さもまた魅力のひとつ。そして、星空に照らされて妖艶な表情を見せ、陽の光に照らされ、さらに私たちを魅了する。

繊細で、どこか脆く、美しく。私たちの人生にもどこか似た深遠なる美の存在。いつも同じではなく、さまざまな輝きを見せてくれるから、さらにひきこまれてしまう。
春がすぐそこまで来ている2月の陽の光のなか、オトニエルの世界を堪能ください。


「ジャン=ミシェル オトニエル:マイ ウェイ」
原美術館
3月11日(日)まで
オトニエルの子ども向けワークショップ「ふしぎな現実」(共催:ボンポワンジャポン株式会社)も開催中
http://www.haramuseum.or.jp


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