2009.12.17
Thonik、廣瀬智央、スズキユウリ。
12月のスパイラルで
表参道のスパイラルで、デザイナー、Thonik(トーニック)の展覧会がスタート。本コラムにも登場いただいている廣瀬智央さん、スズキユウリさんのトークイベントも。
12月15日開幕、12月29日までの「Thonik exhibition "en"」から紹介しましょう。
スパイラル25周年キャンペーンのデザインにも深く関わっているThonik。「建物外観から展覧会は始まっています」とディレクターのThomas Widdershoven(トーマス・ウィデルスホーフン)、パートナーのNikki Gonnissen(ニッキー・ゴニッセン)が言う通り、ファサードや館内カフェなど、スパイラルビルと密に関わる展示となっています。
中央がThomasとNikki。8月の記事にも登場している2人のお子さんも、アムステルダムより来日。左から2人目がスタッフのPascal Brun。左は彼のガールフレンド。一番右がThonikアムステルダムに所属後、現在はThonik東京代表の柴田直美さん。
Photo © Noriko Kawakami(会場他も)
カフェとギャラリースペースを逆にしてしまうという大胆な発想!「en」をテーマにしたバナーやこのためのカフェテーブルも登場。いつものカフェスペースは、彼らの代表的なグラフィックワークを絨毯にした作品が並びます。「グラフィックデザインは一般的に短時間で消費される運命にある。だからあえて時間のかかる手織り絨毯にしてみた」そう。
壁にはボイマンス=フォン・ボニンヘン美術館のポスター。1968年のメキシコシティオリンピック時にデザインされたクセのある書体が美術館のロゴとなっていましたが、そのロゴをシンプルなものに変え、従来の書体は整理して、展覧会のアーティスト名に使用。
閉館後のトーマス&ノア、スオミを発見。そのボイマンスのデザインの絨毯でこんな遊びを! 厚い高級絨毯なので、ストライプ部分をうまく走らせるのにはコツが必要(笑)。
会場に作品が大集合。2008年のヴェネツィアビエンナーレ国際建築展のアートディレクション、ユトレヒトのセントラールミュージアムのCIリニューアル、アムステルダム市CIリニューアル(市のマークを「×××」にしてしまいました!)など、オランダを代表するデザイナーの活動に出会ってください。どのデザインもコンセプチュアルで明快。どこかアイロニカルなのも大きな魅力です。その醍醐味を知ると、クセになってくる......。
オランダ社会党(SP)の選挙キャンペーン。抵抗勢力(野党)の象徴「投げられ、ひしゃげたトマト」を柔らかくロゴ化、党首自らトマトスープを配るなどの試みも実行し、得票率をおよそ3倍に伸ばす快挙に。このプロジェクトも含む一連のThonik作品をまとめたカタログ『thonik en(トーニック en)』(美術出版社)が本展にあわせて発行に。会場で先行販売中です。
展覧会初日に行われたトーマスのトークでは、オランダ社会党が制作した、高齢者の在宅ケアについてのテレビ広告も紹介されました。高齢の女性がカメラに向かって一枚づつ服をぬいでいき、下着もぬいで最後には全裸になってしまう、という衝撃的なもの。
「メアリーが私の面倒を見てくれていたのに、費用がかかるという理由で、別の担当者がきた。そしてまた別の人に変わった。......だから私は国の前で裸になります」。政府(与党)に対するメッセージ。当然ながら物議をかもしたそうですが、内容のすばらしさがすぐに理解され、国民が選ぶ「人気テレビ広告」賞に輝いたそう! オランダらしいエピソードですが、こうしたメッセージ発信の試みを、Thonikは果敢に行っているのです。
そうした彼らの展覧会を国や国の美術財団が支援しているというのもオランダらしい一面、この文化支援の姿勢がすばらしい。「日本オランダ年2008-2009」のフィナーレを飾る同展。初日にはミッフィーもかけつけました。駐日オランダ王国大使館のBas Valckx(バス・ヴァルクス)さんとスパイラルのチーフキュレーター、岡田 勉さんと。
ところで、スパイラルは今、さまざまな「enキャンペーン」を行っています。
「enとはオランダ語で"and"を意味する言葉」とトーマスとニッキー。そうした「en(縁)」「and」などの意味が込められたトークを週末に開催、私も参加します。
今回は盛りだくさんの内容になってしまいますが、その話題にも触れておきましょう。
12月20日のゲストは、ミラノ在住のアーティスト、廣瀬智央(さとし)さん。
このコラムで廣瀬さんのご自宅でのすばらしいディナーの記事を紹介したのは、2008年11月でした。ディナーの直前、私は友人がトスカーナに持つワイルドなオリーブ"林"で、2日間オリーブ収穫に参加し、くたくたになっていたこともあり(廣瀬さんがよく行かれるオリーブ畑とはだいぶ違っていたよう......)、オリーブの話題でも盛り上がりました。
発行されてすぐに大反響の、『旅して見つけたイタリアの保存食レシピ』。廣瀬さんの食、イタリアへの熱い思いから実現した一冊です。表紙写真ももちろん廣瀬さん。
Photo: Courtesy of Satoshi Hirose
「アートと日常生活が密接に結びつくイタリアでの生活に大きな影響を受け、食材などの身近なものをアート作品に変えていく」。廣瀬さんのプロフィールにありました。
食をはじめ、日常のなかにこそアートの精神が存在しうるのだということを改めて廣瀬さんとお話ししたい。そう思い続けていたところに、トークでご一緒できることに......!
『旅して見つけたイタリアの保存食レシピ』(池田律子さんと共著、阪急コミュニケーションズ)も、先日発行になったばかり。12月20日には、食についても多いに語っていただけるはず、と期待しています。

パンに乗せて食べると本当に美味なラルドのオイル漬け(上)。他にも様々なオイル漬け(ナスのブーリア風、ムスカリの球根、ポルチーニなどなど)、シロップ・リキュール漬け、ジャム、保存食を活かしたレシピまで、どれもおいしそう! イタリアの多層な文化に関する廣瀬さんの文章も含む一冊です。
もうひとり、12月27日のゲストは、Yuri Suzuki(スズキユウリ)さん。
今年9月のコラムで紹介させていただきました。記事でとりあげたのはアムステルダムでの「朝食マシン」プロジェクトでしたが、その後彼は、リンツ、メキシコ......と各国でのプロジェクトに大忙し。先日はインドに滞在して作品を完成させたところです。
インドでの作品とスズキユウリさん。明和電機のアシストワークの後にロンドンのロイヤル・カレッジ・オブ・アートでプロダクトデザインを修めたスズキさん。世界最古の電子楽器テルミンの演奏者、さらにはDJとしても活躍中。Photo: Courtesy of Yuri Suzuki
ロンドンを拠点に、軽やかなフットワークで地球規模の活動を展開しているスズキさん。スズキさんが今感じているものとは何だろう? といつも興味があり、ゲストとしてのご登場をお願いしたところ、快諾をいただけました。アート/デザイン、アナログ/テクノロジー、素材/サウンド......さまざまな要素を発見して結びつけていく視点、リミックスの醍醐味などについても語ってもらえれば......。
© Yuri Suzuki
インドでの新作。サウンドと子どもたちのリアクションは以下の動画でぜひ。
すばらしい作品です。インドでは予想を超えた体験があったそう。そのお話も12/27には聞かせてもらえるかもしれません。
「当日、会場で音も出せますか?」とのメールが、インドよりイギリスに帰国したばかりのスズキさんより届いたところです。どんな話が聞けるのか、こちらも今から楽しみです。
この一年をしめくくる月に、大好きなアーティストやデザイナーの方々との嬉しい再会。それも、会場に来てくださる皆さんと一緒に、お二人の話を聞ける機会......。
「en/and」のエキサイティングな広がりを、改めて感じています。
詳細は
http://www.spiral.co.jp/e_schedule/2009/12/spiral-talks.html
3日前までに予約を。席に余裕があれば当日参加も大丈夫のようです。
Visitors to the Spiral can see the well known, Amsterdam-based graphic design studio Thonik's first exhibition in Japan which has been on display since the 15th of December. This "Thonik exhibition 'en'''" will be running until the 29th of December.
They have been working on the visual identity and visual communication for Amsterdam city, the Centraal Museum in Utrecht, the Museum Boijmans van Beuningen in Rotterdam, the Public Library in Amsterdam and amongst other projects. They have just received the Dutch Design Award 2009 in recognition of their sharp and powerful art direction for the 11th International Architecture Biennale in Venice, 2008.
From 2005 onwards, they also developed a new corporate identity and the communication campaigns for the Socialist Party. Their poster, "NU SP" (NOW SP) became a famous graphic design for the Dutch people. Through visual expression and a wide range of related activities, they continue to explore the relationship people form with their surroundings.
At Thonik's current exhibition, they are exhibiting their previous works and their new design project for Spiral's 25th anniversary campaign that will continue until next autumn. They also tried the bold idea of exchanging the space between café and gallery in the Spiral building. In the current café space, we can see nine banners that were designed by Thonik for Spiral campaign "en." (Please read my previous column about Spiral and their key word, "en.")
A new book, thonik en, has recently been published by Bijutsu Shuppan-sha (ISBN 978-4-568-10385-4, text in Japanese and English). I contributed an essay to that book.
Here, I introduce several pictures of their exhibition in Tokyo. I had an edifying discussion with Thomas Widdershoven and Nikki Gonnissen about our upcoming collaboration. Also, I had a great time meeting their kids.
Alongside their exhibition, Spiral plans to have talk session programs inviting two other creators. I will help facilitate the sessions.
On the 20th of December, we will welcome Milan-based artist, Mr. Satoshi Hirose. Recently, he published a new book about Italian preservative food. We would like to talk about the important common points between our daily life, food, art and creation (In this column, I introduced him when I was invited to dinner at his house.)
On the 27th of December, we will then welcome London-based artist/designer, Yuri Suzuki. He has been realising a lot of his Sound Machine projects all over the world and he has just returned to London from India this month. With Yuri, I am planning to talk about the points of view on "remix," the importance of the activities which use elements found in daily life as a springboard to create his own objects. You can also enjoy Yuri's previous project shown in Amsterdam this summer in my column.
What a great time for me to catch up with my favorite artists again in the last month of this year!
text by Noriko Kawakami
川上典李子
ジャーナリスト
Noriko Kawakami, journalist
デザイン誌『AXIS』編集部を経て、94年独立。ドムスデザインアカデミーリサーチセンターの日伊プロジェクトへの参加(1994-1996年)を始め、デザインリサーチにも関わる。現在は、「21_21 DESIGN SIGHT」のアソシエイトディレクターとしても活動。主な著書に『Realising Design』(TOTO出版)など。