2010.01.19
Twitterでいたいけな男の子のつぶやきを聞くように。
『(500)日のサマー』
日めくりカレンダーのような映画である。主人公は、メッセージ・カード会社のコピーライターであるトム・ハンセン。20代(推定)彼が、社長のアシスタントとして入社してきたキュートな女の子サマーに恋をし、それからフラれるまでの500日がアトランダムに描かれる。それは情熱的な出会いとかドラマティックな別れとかじゃなくて、絵日記のように淡々とデートだとか、ふたりの会話だとかが描かれる。とってもユル~い作りの映画です。だから、観終わった直後のインパクトはそれほどでもなく、サマー役のズーイー・デシャネルの日本人好みのガーリーなファッションだとか、いまどきの草食系男子の代表のような、トムを演じているジョセフ=ゴードン・レヴィットは、ロバート・パティンソンよりもウケそうだとか、そんなことを考えてそれなりに楽しんでいたのだが、観終わった後に、なんだか何度も思い出す。
(c)2009 TWENTIETH CENTURY FOX 2010年1月、TOHOシネマズ シャンテ・シネクイント他 全国ロードショー
なぜかと考えていたら、その理由は、これが"恋する男の子の胸の内"を描いた類まれな映画だから。一見、ボーイ・ミーツ・ガールのスタイルをとっているけれど、この物語は恋愛映画じゃない。恋する男の子の精神的変化をまるで定点観察するみたいに、克明に記録したものなのだ。
サマーに出会ってぽーっとなって、初デートに成功して浮かれて、でも、サマーの本心がイマひとつ掴めなくって、落ち込んだり。まるでtwitter でトムの心をフォローしているみたいだ。
そんな風に恋する男心の間をゆらゆらと漂ってみるのが、この映画の醍醐味です。恋する乙女の心を、ああでもない、こうでもないと描いている映画はあるけれど、男心を描いた映画って思えば皆無に近い。もちろん、恋にのぼせた男のたわごとなど聞きたくもないと思う人もいるかもしれないが、そこは日めくりカレンダー式が効果を発揮して、いつの間にかトムのほのぼのとした世界へ入り込んでいってしまうのです。まるで、相田みつをのお言葉のよう。肉食系女子も、ほだされること間違いなし。
立田敦子
映画ジャーナリスト
大学時代から始めたライター&エディター業を開始、徐々に映画ジャーナリストの道へ。映画祭や海外出張などでインタビューする映画人は、年間200人ほど。フィガロジャポンやキネマ旬報等に映画評、コラム、インタビューなどを執筆。