2010.01.29
ノラ・ジョーンズ スペシャル・ライヴ@赤坂BLITZ
最新アルバム『ザ・フォール』が評判のノラ・ジョーンズのスペシャル・ライヴが、1月20日に赤坂BLITZで行なわれました。完全招待制で、7万5千人の応募者から選ばれた幸運な900人のファンがノラ・ジョーンズの美声に酔いしれました。
ノラ・ジョーンズはジャズ・シンガーとして扱われながらも、従来のジャズ・シンガーとは趣を異にしていて、カントリー・ミュージックやブルーズ、ソウル・ミュージックの影響が色濃く、ポップスと呼ばれても全く異存のない音楽です。4作目『ザ・フォール』に至っては、これまでのスタッフやミュージシャンを一新。プロデューサーにトム・ウェイツ、キングス・オブ・レオン、ミュートマスなどを手掛けているジャクワイア・キングを迎えてグルーヴを重視し、バンド・サウンドが好きな音楽ファンにも受け入れられる作風に仕上げています。私はとても気に入っています。
デビュー・アルバム『ノラ・ジョーンズ(Come Away With Me)』(2002年)がグラミー賞で主要4部門他、計8部門を受賞し、一大ブームを起こしました。
ステージに現れたノラ・ジョーンズは明るいワイン色のワンピースに、小ぶりのギターである赤いフェンダー・ムスタングを持って登場。映画『マイ・ブルーベリー・ナイツ』(2007年)の主役を務めるなど、音楽以外の仕事も彼女をより垢抜けさせる要因になったのでしょう、ショートヘアもとても似合っていて、2005年の来日公演時よりも、グッと魅力的になっていました。
ノラを含めた6人のミュージシャンによる素晴らしい演奏に酔いしれました。
最近観たエミリアーナ・トリーニ、キャット・パワーのライヴもそうでしたが、ノラの場合もまず職人肌のバック・ミュージシャンたちが紡ぎだすサウンドの1つ1つが素晴らしく、瞬時に各曲の音世界を構築してしまう技に、魅せられます。ソロ・アーティストとしても活躍するサラ・ドブソンはアコースティック・ギターやセミ・アコースティック・ギターを弾き分け、トム・ウェイツやベックとの共演をはじめ、多彩な活躍をしているギタリスト、スモーキー・ホーメルが奏でる音色は、アートのように絶妙なサウンド。「イッツ・ゴナ・ビー」での効果音的プレイや「スタック」でのソロをはじめ、聴き入ってしまいました。
ジョーイ・ワロンカーは、ミュージシャンの間にもファンが多い人気ドラマー。
ドラムスのジョーイ・ワロンカーはR.E.M.との活動で知られるものの、FIGAROjapon 1月20日売号に取り上げたように、トム・ヨーク(レディオヘッド)の新バンドにも参加している達人。「ヤング・ブラッド」を筆頭に、こちらも心の襞に触れるような音色を刻みます。全体から見ても、「テル・ヤー・ママ」をはじめ、CDから聴く演奏よりもどの曲も立体的にカラフルに仕上げられ、書き出したらキリがないほど、各ミュージシャンの演奏が絶賛ものでした。まさにライヴだからこそ生まれた、瞬間的な熱情や息遣い、その場の雰囲気までもを含んだ極上ミュージックが誕生していました。
ステージではピアノとギターを演奏したノラ・ジョーンズ。
そんな環境の中で、ノラはすっかりくつろぎ、まるで家のリビングルームで披露しているかのような、温かみ溢れる歌声を響かせます。ギターはお世辞にも上手とはいえないけれど、そのちょっとヘタウマ的な感じがさらに音楽を親しみやすいものにし(といっても、バックの演奏が完璧ですから)、時にはサラのギターとノラのピアノという女性のみの編成で、ゆるやかな時間も作っていきます。
ヒット曲を含め、全部で16曲。演奏する側も観客も大満足のライヴでした。
結局のところ、ノラ・ジョーンズの人柄そのもの、ノラのヴォーカルが中心に存在することで、この心を和ませる音空間が生まれているわけです。犬が大好きなノラはCDのアートワークに犬と一緒に映っていますが、来日中に渋谷で2匹の犬がパンツを履いていたのを見つけたらしく、曲間のトークでその話と共に「awesome!!」を連発。今年31歳になるそうですが、ちょっとした仕草や発言も可愛らしくて、きっとこのままジャンルを意識せずに自分らしい音楽を作り続けていくのでは、と感じました。
Live Photo: 藤本和典
*to be continued
伊藤なつみ
音楽ジャーナリスト
フィガロジャポンではActualite のページをメインに原稿を執筆。マドンナ、デイヴィッド・ボウイ、U2、クインシー・ジョーンズ、ビョークをはじめ、洋楽邦楽問わず多数のアーティストに取材。
・ELLEgirlでの連載ブログはこちら
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