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エミー・ザ・グレイト取材@よしもと

2009.07.07

エミー・ザ・グレイト取材@よしもと

6日、心に静寂をもたらすような小雨の中、イギリスで話題を集めているというエミー・ザ・グレイトを取材してきました。場所はお笑いで圧倒的な人気を誇る、吉本興業の東京本部。吉本って意外かもしれませんが、彼女のデビュー・アルバム『ファースト・ラヴ』は、(株)よしもとアール・アンド・シー 洋楽プロジェクトという部署から9月にリリースされるのです。最近はいわゆるレコード会社、ミュージック・ビジネス専門に限らないあちこちの会社からCDが発売されています。とはいえ現場で再会したのは、以前他のレコード会社に勤務していた、音楽にこだわりを持つ懐かしい顔触ればかりでした。

ito_a.jpgエミー・ザ・グレイト(右)を撮影する村越元氏。下に見えるのが緑に染まった旧校庭。

オフィスがあるのは、新宿は花園神社の隣、ゴールデン街の正面。旧四谷第五小学校の校舎に昨春移転したのですが、足を踏み入れてみて、あまりにモダンな建物なので驚きました。内装はかなり変えたそうですが、教室の面影を十分に残した各部屋をはじめ、空をダイナミックに見上げられるR状の窓、そこから見下ろす校庭の緑も鮮やか。歌舞伎町の喧騒も遮る異空間に、しばらく仕事を忘れてボーッとしていたくなるほどです。お笑い番組の打ち合わせもここでやる場合が多いそうですが、映画のセットになり得る懐かしい雰囲気が漂うせいか、時間の流れも緩やかに感じられ、どんより曇った雨の日でも外を眺めているだけで心が和みます。

ito_b.jpgノーマン・クック(ファト・ボーイ・スリム)のソロ・プロジェクトBPAに参加したことも。

さて、エミー・ザ・グレイト。彼女は香港に生まれ、12歳からイギリスで育った25歳のシンガー・ソングライター。静かに爪弾くアコースティック・ギターに響く明るい声質の歌は、梅雨時の鬱陶しい気分を蒸発させてくれるようで、爽やかに聴くことができます。時にはリズミカルなストリングスやカントリー調のヴァイオリンが踊るなど、フォーキーな音楽ながらバリエーションの豊かさを感じさせます。ただ、歌詞が難解。久しぶりに、インタヴューで何から訊くべきか迷ってしまいました。

好きな映画監督は、ウッディ・アレンやチャーリー・カウフマンのようなコメディを手掛ける人。女流詩人ではアイリス・マードックやシルヴィア・プラスのような告白的な詩を書ける人々に共感し、フィリップ・ラーキンのように細かいところにこだわりをみせるイギリスらしい詩人も好きだそう。また、エミリー・ブロンテのように現実世界の中の何か神秘的なものを描く作家にも惹かれるそうです。確かに、このどれもエミーの作風に影響を与えているように感じます。そして、「脚本家や作家の日記を読むのが好きで、好きな作家がどういう日常を送り、その過程でどのようにこれらの作品を作ったかを知ることが興味深い」と、話します。

ito_c.jpg歌詞はシリアス&シニカルに感じたのですが、本人曰く、楽観的な性格だそう。

さて、そのエミー・ザ・グレイト自身はどうかというと、次のように話してくれました。
「自分で自分が感じているものを理解するために歌詞を書いているの。自分の思い描いている完璧な世界のイメージを、曲という形にしたいのよ」。

歌詞を書く動機もユニークで、"大きな衝撃が起きた時、普段とは全く違う反応をする人の様子に興味がある"という発想から生まれた「アブセンティー」、"交通事故に遭った時に人はどう反応するかを、自分の中に思い描いて書いた"という「MIA」など、着眼点からして想定外。

根は楽観的だそうですが、中国人である母親が、"すごく良いことがあっても、それによって反することも見えてしまう性格"なので、彼女自身も"良いことに必然的についてくるマイナスなこと、悪いことに必然的についてくるプラスなことが見えてしまう"ようになってしまったそう。バランス感覚というより、陰陽につながる発想なのでしょう。だから、歌詞も一筋縄ではいかない展開になっているようです。

もちろん音楽の話もしましたが、言葉を綴ることにとても関心が強い様子。「今、自分の中でうまくやれているのが音楽なだけ。雑誌に記事を書いたり、子供たちに物語を書いて聞かせたり、自分の人生について記録をしたり、友人のインターネット・ラジオ上のウェブサイトに記事を書いている中で、今は音楽について取材を受けることが多いのよ」と、話していました。曲やヴォーカルがシンプルで聴きやすい分、歌詞の発想や構成が注目されやすいのでしょう。

ito_d.jpgアーティストというより、文学少女風の面影が。

しばらくは彼女のインタヴューとアルバムを聴き直し、記事は近いうちに本誌アクチュアリテに掲載します。そして、秋にはコンサート来日を予定しているそうなので楽しみです。

エミー・ザ・グレイト取材の後は、担当者であるFIGARO編集部のエミーさんの1ヶ月遅れのバースデー・ケーキを食べに、写真家の村越元さんと3人で乃木坂へ。私は彼女にこの1年の抱負を訊くつもりだったのに、「"グータン"(TV番組)みたいだね~」と談笑する元さんからエミーさんは質問攻めにあってしまい、タジタジ状態。普段良く仕事をしていても、なかなかゆっくり話をする時間がないし、私も久しぶりのカフェだったので、楽しかったですね~。優しい雨音の似合うおだやかな午後でした。

*to be continued

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2009.07.07  |  CULTURE
COLUMNIST

伊藤なつみ

音楽ジャーナリスト

フィガロジャポンでは音楽ページとRendez-vousのページをメインに原稿を執筆。マドンナ、デヴィッド・ボウイ、U2、クインシー・ジョーンズ、ビョーク、レディー・ガガをはじめ、洋楽邦楽問わず多数のアーティストに取材。
・ELLEgirlでの連載ブログはこちら
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