2010.02.22
パッション・ピット 取材&ライヴ
デビュー早々、米英の音楽誌が大絶賛したパッション・ピット。元々は中心人物のマイケル・アンジェラコスが当時のガールフレンドのためにバレンタイン・デーのプレゼントとして書き上げた楽曲でしたが、そのエピソードと共に作品内容が高く評価され、インディーズEPながらアメリカのMTVで特集が組まれるほどの話題となったそうです。そのうちバンドで演奏した方がよりよい音楽になるのでは?と、Ninja TuneよりShuttle名義で作品を発表しているネイト・ドンモイヤー(Dr)やバークレー音楽大学出身の友人などが加わり、5人編成として再スタート。デビュー・アルバム『!マナー(原題:MANNERS)』を発表しています。
きらめく星屑の中で宇宙遊泳しているようなエレクトロ・ダンス・ポップ・チューンに踊る、マイケルのソウルフルでどこか物悲しいファルセット・ヴォイス。"一度聴き始めると病み付きになる"という評判に頷いてしまうほど、私も非常にハマッています。また、レディー・ガガfeat.ビヨンセの「テレフォン」をはじめ、多くのリミックス作品を手掛けていることも、彼らのセンスの良さを実証しています。しかし、実際にマイケルに話を聞いてみると、単なるダンス・チューンに留まらず、リスナーの心を惹きつけて止まない音楽には確固たる理由がありました。
取材に答えてくれた中心人物のマイケル(Vo&Key)。
――曲を作りながら、自分の音楽に何を求めているのですか?
「基本的に僕が作る音楽は、僕の精神状態を表しているものなんだけど、聴いている人にとっては、それぞれの解釈ができる幅のある曲を作りたい。よくネット上で、僕の書いた歌詞を読んで感動して、自分にとってそれがどういう意味があるのか語っている人がいる。その解釈って、僕が言おうとしたこととは全然違うものなんだけど、でもそれが僕にとって面白い。僕が想像しないものだったからだ。その曲がその人にとって意味のあるものになった、それが大事だと思う。たとえば大好きなレディオヘッドの曲の僕の解釈は、トム・ヨーク本人の言いたかったこととは程遠いかもしれない。でも、自分にとって意味のある大切な曲であることは変わらない。それが芸術の力だと思うんだよね。いろんな感じ方があって、意味をもつ。それが素晴らしいんだと思う。僕の音楽性は決してわかりやすいものではない。人によっては、"この曲大嫌い、最低!"って反応を起こすかもしれない。でも様々な音楽が手元にある時代の中で、リスナーの心の中に目立った動きを起こす、それはこの時代の中で通用するものがあるからなんだと思う。それが僕が音楽を通してやりたいことなんだ」
1つの質問に対し、それぞれじっくり答えてくれます。
――曲を作る際に特にこだわっていることは?
「一番気をつけている点は歌詞と音楽のバランス。まずは、とても手に取りやすい、わかりやすい、魅力的で、印象に残る、そしてきれいな良く作られた音楽を作りたい反面、自分の中で迷っていた部分、悩んでいた部分を、うまくマスクして隠していくことに気を遣ったよ。この明るい部分と暗い部分の共存が、僕そのものを語っている。僕は幼少時からADD(集中力欠乏症)という障害があり、とても勉強が良くできるはずなのにそのせいで結果が出なかったり、人や自分に対していろいろなことを言ったり、行動をするなど、本当はそうしたくないのに、コントロールができなかった。でも人は、僕のことを理解できない。だから本当の自分とのギャップに凄くフラストレーションを感じていた。自分がどうしてそうなったかを説明する機会があればいいけど、機会がなければ、僕は正常であることにしているよ。その時点で僕はマスクをしているんだけどね。そして、自分の状態をナマナマしく説明するのではなく、イメージで語ることができるのが音楽なんだ。その結果、僕の音楽を聴いて、みんながすごく楽しんでくれたり、歌って踊って明るい体験をしているというのが、僕のマスクをしている裏側とは全く反対の状態になっていて面白いね。でも、このコントラストが、僕自身でもあるんだ。母国のアメリカでは、人は僕に"楽しい曲を書くね!"って言うけれど、なぜか日本では曲の裏にあるものも感じ取ってくれるから、感動しているんだよね」
アルバム『!マナー』はマイケルにとって"希望"そのものであり、人として成長するためにも、自分のダークな内面を厳しく追求しながら制作したそうです。「ダークな部分をほっておくと、人間はその部分に飲み込まれてしまうからね。でもこのアルバムのダークな部分は、結果的には明るい部分とつながっているんだ」
たとえば曲「シーウィード・ソング」では、「自分の感情をどうやってハンドリングし、対処していくかを"水"のイメージとして表現し、今の自分もこれからの自分も変わらないものの、その先に光は見えるということを表現している」と、説明します。
マサチューセッツ州ケンブリッジ出身の5人組。
こう書くと、難しい音楽に思えそうですが、大ヒット曲「ザ・リーリング」を筆頭に、2月5日にShibuya DUO Music Exchangeで行なわれたライヴは、ソールドアウトとあって、大盛況になりました。
盛り上がるフレーズでは、全員が歌い踊るようにしてハイテンションに。
圧倒的に素晴らしいネイトのドラムスを軸に演奏が展開され、曲が盛り上がる終盤になると、2人のキーボード奏者に加え、ヴォーカルのマイケルもベース奏者も畳み掛けるようにキーボードを演奏。しかも、ドラムもシンセドラムなどエフェクトを掛けて一気にエレクトロ・ダンス色を強調し、転化していきます。想像以上に演奏がうねるエネルギッシュなライヴで、圧巻でした。
自分を音楽でイメージ化していくマイケル。今後の音楽性は如何に。
インタヴューでマイケルは、「今のバンド・サウンドは、僕がプロデューサーと一緒に制作していた音楽感覚からかけ離れているので、果たしてパッション・ピットという名前で語っていいのかわからない。次は違うバンド名をつけて活動するかもしれない」と話していましたが、どちらにしてもマイケルの成長と共に大きく進化していくパッション・ピットの音楽からは目も耳も心も離せないと思いました。
Live Photo:Teppei
*to be continued
伊藤なつみ
音楽ジャーナリスト
フィガロジャポンではActualite のページをメインに原稿を執筆。マドンナ、デイヴィッド・ボウイ、U2、クインシー・ジョーンズ、ビョークをはじめ、洋楽邦楽問わず多数のアーティストに取材。
・ELLEgirlでの連載ブログはこちら
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