2008.12.16
フィガロジャポン(12/20号)、きものページにまつわるお話
今回は、フィガロジャポン(12/20号)のきものページにまつわるお話を少し。
今までは、きもの特集の時は、表紙は「きもの」でしたが、この号は読書特集で表紙には写真なし。まだ見ていない人は、是非のぞいてみてください。
いつものことですが、きものの場合、洋服の仕事より長くかかるので、終わるとホットして少しだけ放心状態になります。最初のきもの屋さんまわりは、9月、パリコレに行く前でした。染めていただくところからお願いしたり、もしそうでなくても、モデルさんのサイズにあわせて仕立てていただく時間が必要なので、早めにスタートしなければなりません。
撮影用のサンプルがある洋服との違いは、そこです。また、いくら反物で見た時によいと思っても、実際にモデルさんに着せた時どうなるか?帯あわせもイメージどうりだろうか?きものの仕事の経験も決して短いわけではありませんが、撮影が終わるまで心配の種は、つきません。
そうして今回のページができあがったのですが、楽しんでいただけたのか、今度は、それが気になります。自分では、毎回後悔のないよう全力投球しているのですが。
今回のモデルは、映画「山のあなた」で注目の女優さんマイコさん。彼女のようにきものの似合う素敵な人がモデルをひきうけてくれて感謝しています。アンティークのきものは、現在では、つくられていないようなもの、昔のものならではの魅力のあるものを探すのですが、加えて彼女が着るなら、かなり個性的で強いものでも似合いそうなので、探して選ぶ喜びが大きくなりました。
ただしアンティークの場合、常にサイズが問題なのですが、大きめに仕立てなおされた状態のよいものが見つかりラッキーでした。ひとつは、真っ赤な地色に大胆な柄の銘仙のきもの。銘仙は、むかしは普段着として着られていて、可愛いものが沢山あったのですが、現在は残念なことにつくられていません。私自身は、少女時代の日舞のお稽古着が銘仙だったので、懐かしいきものです。すべりがよくて軽い理想的な日常着なのにと残念です。もうひとつのアンティークは、今では決してできない難しい絞りを駆使したもの。こんな絞りは、お振袖や訪問着にも、なかなか見られません。帯も、前は、誰が袖(たがそで)、後ろは、お能の楽器や装束が刺繍されている凝ったもの。
きものを人に着せずに、物だけで撮影するのは至難の技です。これは、洋服にもいえることかもしれませんが・・・毎回、着付けの本多さんのお力で、なんとかのりきっているのですが。特に、きものを着たのと同じかたちで見せるのが超難かしい。
一見・無雑作に見えるかもしれませんが、口ではいえない大変さです。物だけで撮影するページの方が、人に着せるより時間も沢山かかります。それでも、ページを見た人が、イメージをふくらませながら楽しんでいただけるのならと、頑張ってしまうのですが。
マイコさんのページに1日。きものだけの撮影に1日。そして今回は、私自身のきもののページも。写真を撮られるのは苦手ですが、なんとか無事、終了。撮影の後、事務所に戻ってから撮っていただいたのが冒頭の写真です。目下、いちばんの気に入りの文久小紋(ぶんきゅうこもん)です。それに加えて母から譲られたきものや、子供時代の写真も。ここまで公開したのは、初めてのこと。なんだか開き直った気分でした。
ひとりでも沢山のひとが、いいかたちできものに興味を持ったり、好きになるきっかけになればと思っているのですが。逆効果にならぬことを祈るのみです。
フィガロジャポン 12/20号 104,105ページから
原由美子
スタイリスト
日本のスタイリストの草分け的な一人。1970年雑誌「an an」創刊に参加。その後、スタイリストとして活動をはじめ、1990年からはフリーのファッションディレクターとして「フィガロジャポン」「婦人公論」「Hanako」など数々のファッションページや朝日新聞のコラムなどを手掛けてきた。著書に「原由美子のおしゃれ上手」など。