2009.02.26
加賀友禅について
はんなりした美しさが魅力の京友禅は、よく知られています。それに比べると加賀友禅は、東京では見る機会が少ないせいか今ひとつ若い人達には知られていないようで残念です。というわけで今回は加賀友禅について少しだけ。
実は2006年から始まった「ライフ&ファション金沢ウイーク かなざわごのみ2006」で、「懐かしい華やかさ、加賀友禅の展覧会」をプロデュースさせていただきました。
私と加賀友禅の出会いは30年ほど前になります。当時きもの屋さんの顧問の仕事をしていたのですが、そのご縁で加賀友禅の作家の方とコラボレーションして訪問着を作っていただいたことがあります。私のイメージは「夜桜」。黒に近い濃い紺色地に山桜を描いていただきました。思い通りのきものになりましたが、自分で手に入れるには、あまりにも高価で眺めるばかりでした。今になって考えると、なんとか手に入れるべきだったとは思うのですが・・・それともうひとつ後悔が・・・そのきものには、あまり色がたくさん使われていません。加賀友禅らしさを、もっと追求するべきだったという思いも後々まで残っていました。
加賀百万石で知られる金沢はご存知前田家のお膝元。武家社会が栄えた町でもあります。公家社会の京都とはそこが違うのですが、武力だけではなく独特の文化が栄え、焼き物、漆器等にも優れたものが沢山あり、茶道も生活に根付いています。そして加賀友禅と京友禅との違いは、まず金箔、絞り、刺繍といった染色以外の技法を使っていないこと。加えて「加賀五彩」とよばれる臙脂、藍、黄土、草、古代紫の落ち着いた五色が基本にあります。それらの色を使った少し前の時代のきものは、きらびやかさとは違う金沢の風土に馴染む一種独特の華やかさと温かみが魅力です。
今の感覚で見ると少し重たく、ぼってりし過ぎと感じるむきもあるようですが、それこそが加賀友禅の味であり魅力だと思っています。というわけで、もう3年前のことになりますが、2006年の10月に金沢21世紀美術館で行うことになった展覧会では現代の作家による新作と、金沢に在住の方がお持ちの昭和の中頃を中心に作られたものを展示することにしました。新作は訪問着とお振袖、留袖、絵羽織など。手描きによる一点物ですから普段着ではなく、格の高いこういうものになります。
「四季茶屋辻図」訪問着 作者・杉浦伸
「花愛」訪問着 作者・茶谷孝志
「春秋華文」訪問着 作者・田丸幸子
加賀友禅の振袖 作家名・能川光陽
加賀友禅のお引きずり 作家名・能川光陽
いま着たくなるきものをテーマにして展示した加賀友禅のきものの魅力が少しでもわかっていただけたら嬉しいです。
金沢は、本当にきものの似合う町です。覚えていらっしゃる方もあるかもしれませんが、おととしのフィガロのきもの特集は金沢ロケでした。茶屋街はじめ、どこもきもので歩くと絵になってしまうのです。それに美味しいものも豊富です。2006年以来どうしても実現できなかった仕事抜きの金沢行きをこの冬中に絶対現実のものにしようと心に決めたところです。
講演中の原さん
原由美子
スタイリスト
日本のスタイリストの草分け的な一人。1970年雑誌「an an」創刊に参加。その後、スタイリストとして活動をはじめ、1990年からはフリーのファッションディレクターとして「フィガロジャポン」「婦人公論」「Hanako」など数々のファッションページや朝日新聞のコラムなどを手掛けてきた。著書に「原由美子のおしゃれ上手」など。