2009.06.10
単衣(ひとえ)のきもの
六月は単衣のきものの季節。七月八月の夏物(薄物)とはまた違うということで、聞いただけで敬遠してしまう人もいるようです。私も実はそうでした。日本舞踊のお稽古では、六月から浴衣を着ていましたから。でも最近は、この曖昧で微妙な季節にも、ふさわしいものを着て楽しみたいと思うようになりました。きちんとしたよそゆきは持っていませんが、普段に気軽に着られるものが少しだけあります。
目下のお気に入りは、紬の単衣。ひとつは鎌倉の知り合いの呉服やさんに譲っていただいた、私好みのグリーン系の縞。仕立てあがっていたのですが、サイズもちょうどよく、この季節にピッタリの色なのも得した気分でした。これに博多の献上の黒地に白とグリーンの帯の組み合わせが好きです。かなりカジュアルな街着というところでしょうか。
もう一枚の紬は30代の時につくった上田紬。単衣をと思い、考えに考えて黒地に十字絣のこれを選びました。まわりが明るく白い印象になる季節あえて黒を気取って着たいと望んだわけですが、若気のいたりだった気もします。今になってみれば、先のグリーンのほうが、きものを着たい晴天の日の気分にしっくりすることが多いからです。でも時にはこの黒が洋服と同じ気軽さを発揮して気分が浮きたつことも。それには、母が染めてくれた帯の力が大きいようです。芹沢銈介さんに染物を習っていた母が図案を起こし、型紙を彫り、麻の布に自分で染めたものです。ピンク地の夏帯なんていつ締めるのだろうと、母が作っていた時は思っていたのですが・・・かれこれ40年くらい前になりますが・・・今はひたすら感謝しつつ締めています。この帯のおかげで華やいでこのきものが着られます。派手になったら、白地に黒の博多の献上、それでも派手なら、グレーの帯にして等と想像します。
最後の一枚は、藍染木綿。故鯨岡阿美子さんから譲られたもの。大胆な鶴亀の柄がいかにも阿美子さんらしいきものです。袷だったのですが、着る時期が難しい気がして単衣に仕立て直しました。それでも、なかなかタイミングよく着られません。母が遺した光沢のある縞の帯で、少し洒落た街着ふうにと考えているのですが、まだ実際に着た経験はなし。やはりこういうきものは白地の献上でスッキリ着て普段着と割り切ったほうが良いのかもしれませんが。
というわけで、今年も単衣のきものを着ることなく夏が来てしまいそうです。でも興味のある人は、とりあえず道行く人をよく観察してください。自分が着るとしたらと頭の中で想像しながら・・・お店や呉服売り場も機会があったら覗いてみると、思わぬ発見があるかもしれません。
そして、いよいよ20日にはお出かけ浴衣を特集したフィガロがでますから、お楽しみに。
原由美子
スタイリスト
日本のスタイリストの草分け的な一人。1970年雑誌「an an」創刊に参加。その後、スタイリストとして活動をはじめ、1990年からはフリーのファッションディレクターとして「フィガロジャポン」「婦人公論」「Hanako」など数々のファッションページや朝日新聞のコラムなどを手掛けてきた。著書に「原由美子のおしゃれ上手」など。
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