2010.01.06
京都で聞香の会のお誘いを受けました。
あけましておめでとうございます。
実は、12月に経験した聞香の会のことをお話しようと思っていたのですが、
事務所の引越し疲れでダウンしてしまい、こんなに遅くなってしまいました。
京都の俄さんから聞香のお誘いを初めて受けたのは、一昨年のこと。
香を聞くと書いて「もんこう」と読みます。話には聞いていたので興味はあり、香炉を左手に持ち、右手をかざした仕草に憧れていたこともあります。けれど、その時はスケジュールが合いませんでした。でもいつか、それも是非"きもの"でと、思いを強くしていました。
ですから去年の暮、再びお誘いがあった時は、すぐに行く決心をしました。
なにしろ開かれるのは、京都市指定有形文化財と指定されている杉本家。
このお宅に関しても聞いたことがあり、そこで京都でも名高い松栄堂さんのご主人が主催してくださる聞香の会。何も知らない不安はあったのですが、ともかく行きたいと思ったのです。
香道にも茶道のように流派があるそうですが、今回は初心者にもわかるというか、楽しめるように教えていただけるということだったので少し安心しました。
そして少しでも多くの人に香のことを知って欲しいという思いもこめられていました。
ただひとつの大きな不安は、正座がどのくらいもつかということ。
子供の頃から高校のはじめくらい迄、日本舞踊のお稽古をしていたのに、足を悪くして以来、全く正座が苦手になってしまいました。
もう一つの悩みは、きものは着たいけれど、何を着るのがふさわしいかということ。
誰かに尋ねてみようと思っているうちに、前日になっていました。
お茶会のことを考えると無地のきものがいいのだろうなと想像したのですが、少しは遊び心も欲しいしということで、結局、目下一番のお気に入りの文久小紋に決めました。
京都で着る江戸小紋、しっくりとけこめるか心もとなかったのは事実です。
ただし帯は、いつもの吉野格子ではなく黒地の綴れの袋帯にして格調高くしたつもり。
帯あげは藤色。帯締めは水色にして楽しみました。
谷崎の『陰翳礼賛」を思い出させる薄暗い室内で、どんな感じだったか本人は、わからないのですが・・・
聞香の会のあいだ記録を担当された方が着ていらしたのは、やはり無地のきものでした。
男の方のきもの姿も、こういう空間で目にすると、改めて日本人の美意識に思いいたります。
聞香そのもので、いちばん印象深かったのは、源氏香の本当の意味を知ったことでした。
それまで、きものの柄としての源氏香を好きとよく口走っていたのですが、こういうことだったとは。
源氏物語 五四帖の名前が付けられた形のなかから、自分がかいだ香の形を見つける。
同じ香の上をつないでしるすと源氏香の形になるというわけですが・・・
思っていた以上に優雅で奥の深い大人の遊びだったのです。
この説明では、意味不明かも知れませんが、お許し下さい。
何の香か当てるのではなく、五回まわってきた香炉のかおりをかぎ、どれとどれが同じだったかを源氏香の形で表し色紙に書いて提出します。
私としては結構自信ありだったのですが0点でした。
ただしお隣のGrazia編集長と全く同じだったので、座る位置の影響があるという説に大いに納得した次第です。
最後にお点前をいただき終了。
心に残る経験であり、日本人の繊細な美意識や洗練された文化をもっと知りたいという思いが強くなりました。
そしてその夜の宿泊は、憧れの柊家旅館。
日本の伝統の良さをしみじみかみしめた一日となりました。
翌朝、おかみの案内で柊家の旧館部分も見せていただきました。
さりげなく、あの若冲のにわとりの軸がかけられた部屋があったりして・・・
今年は京都にもっと通いたいというのが、今の心境です。
原由美子
スタイリスト
日本のスタイリストの草分け的な一人。1970年雑誌「an an」創刊に参加。その後、スタイリストとして活動をはじめ、1990年からはフリーのファッションディレクターとして「フィガロジャポン」「婦人公論」「Hanako」など数々のファッションページや朝日新聞のコラムなどを手掛けてきた。著書に「原由美子のおしゃれ上手」など。