2010.02.19
映画『人間失格』の衣装のことなど。
先日、伊勢丹の呉服売り場をのぞいた時、気になるコーナーがありました。
ボディーに着せたきものが何体か目についたのです。
今話題の映画『人間失格』の衣装でした。
昭和初期の時代感覚が表現されていて興味深く眺めてしまいました。
角川映画らしく衣装には細かな配慮がなされているという感じでした。

ポスター等にも使われている寺島しのぶさん着用のきもの。
太い縞の染めのきもの。
最近は織りの縞のきものはあるのですが、染めはあまり見かけません。
それだけに時代を感じさせます。
大きい柄の染め帯と太めの帯締めも雰囲気をだしています。
もう少し狭い幅の縞にして、こんなきものを着てみたいなと、ふと思ったりしました。


三田佳子さん着用の2点
映画を見ていないので想像するしかないのですが、
洋服ときものを隔てなく着ていた昭和のはじめの普段着のきものというところでしょうか?
ローズピンクのきものに半幅帯の着こなしが、どんな場面で登場するのか気になりました。


大楠道代さん着用の2点
『ツィゴイネルワイゼン』の大楠さんを思い出してしまいました。
デカダンなムードを優雅にきもの姿で体現していた大楠さん。
今回もモダンな洋服ときものを巧みに着こなしているのでしょう。
横縞のきものは、色は地味ですが、帯と共に柄がとても大胆で強く個性的です。
紺と白の大きな絞りの市松のきものも同様です。この2体は帯留も凝っていて見ごたえがあります。
これらのきものも、分類では小紋になります。
現代の小紋はともすれば無難な小さな柄のものが多いのですが、
こんな大胆なのもいいなと思いました。
無論、数多く持てない場合は勇気がいりますが、ハレのものと割り切って、きものを着るなら、
こういう選択をするというてもあるのではないでしょうか。
もちろんこういうきものが好きということが大切ですが。
この展示は3月2日までやっているようですから、
もし近くまで行くことがあったらのぞいてみてください。
そばに、もちろん主役生田斗真君着用のトンビを重ねた男のきものがガラスのケースに入れられて飾られています。それと中原中也役の森田剛君のきものも。
伊勢谷友介さん着用の夏用の背広もあります。
こちらは、コムデギャルソンの初期のメンズを思い出させられました。
映画やテレビを通じてでもきものに対する興味が拡がるのは嬉しいと素直に喜んでいます。
今年の大河ドラマ『龍馬伝』は従来の時代劇と異なり、
きものがただきれいではなく汚しも徹底しているようです。
それと、なんといっても鬘(かつら)の不自然さがないのが魅力的です。
いろいろな人がいるはずなのに、身分の同じ人が揃うと髪の形はみな同じといった、
時代劇おきまりの不満なしに見られます。
第1回の子供時代の場面で、男の子も女の子もそれぞれ自分の毛で可愛く似合うように、
それもクシャクシャに結い上げていたのが印象的で、それから先の回に希望がもてたのでした。
スタッフクレジットに元モッズヘアの柘植伊佐夫さんの名前を見つけ納得した次第です。
そういえばお正月には、明治座で『細雪』の舞台を見ました。
原作の素晴しさはもちろんですが、
このお芝居が繰り返し上演される一因には艶やかな、でも歌舞伎とは違い、
少しは私たちに身近に感じられる女優さんたちのきもの姿を見る楽しみがあるのではないでしょうか。
客席やロビーでも、一月ということもあり、かなりきもの姿を目にしました。
そういう私も実はきものを着ていきました。
思いのほか長く寒い冬が続いていますが、この後には春。こういう年の桜は早咲きともいわれています。
お花見をきもので。憧れ続けているのですが、まだ実現したことはありません。
今年こその思いが強くなりました。
原由美子
スタイリスト
日本のスタイリストの草分け的な一人。1970年雑誌「an an」創刊に参加。その後、スタイリストとして活動をはじめ、1990年からはフリーのファッションディレクターとして「フィガロジャポン」「婦人公論」「Hanako」など数々のファッションページや朝日新聞のコラムなどを手掛けてきた。著書に「原由美子のおしゃれ上手」など。