2008.10.23
パリコレを見ながら、きもののことを考えました。
例によってパリコレクションに行ってきました。ジャンバティスタ・ヴァリの花びらでびっしりおおわれたようなドレスに見とれながら、グレース・ケリーが着た姿が頭に浮かびます。その後ですぐに、いつか見た「細雪」のお花見のシーン、桜の花びらが散る下をきもの姿の4姉妹がそぞろ歩く場面も頭にチラリ。更に宇野千代さんの桜の花びらのお振袖も目に浮かぶ。
コレクションを見る時は私なりに緊張し、何か新しいもの、今迄に経験したことのない美しさを捜しています。それにしても'73年から通い続けているパリコレなので、以前よりリラックスし、いろいろ空想が拡がっていくようです。でもきものにまで思いが至ったのは初めてのこと。35年も続けているマンネリからではなく、帰国後に控えているフィガロジャポンのきものページのことが、どこか頭の隅に残っているからという気がしました。
ジャンバティスタ・ヴァリ
マイペースでそんなに頑張らずと考えていたはずなのに結局32のショーと展示会を8ヶ所ほど。頭の中は来年の春夏の服でいっぱいになり、その多様さに混乱気味。帰りの飛行機の中で、ともかく型はひとつ、決して変わることのない"きもの"という民族衣装を持ったことに感謝する気持ちになっている自分がいました。
早朝の成田に着き、夕方には2軒の呉服屋さんまわり。撮影用に仕立てていただくきものを見て歩く。パリほど寒くなく、秋らしい東京の街に身を置くと、昨日までの洋服づけの世界は嘘のように消え、誌面を飾るきものへの思いがふくらんでいく。でも、その中にはきっと見たばかりの来年の春夏の息吹もしのびこんでいるはず。そこのところが、私らしいきものページ作りの大切な点ではないかと自分では信じている。
銀座を歩いていたら、セール中と大きく書かれた呉服屋さんがあったので、のぞいてみることに。日本橋にもある老舗で、めったに安売りなどしていない店なので、入ってみて更にビックリ。ごくあっさりした柄だけど、1万5000円の小紋の反物や、5万円以下の大島紬などがあったのだ。すべて買い取った品を扱うので、ごくたまにこういう型の在庫整理をするとのこと。グリーンの縞の大胆な大島はかなり気になったけれど、これ以上きものを、また物をふやさない決心を守ることができて一安心。
もし捜している好きなものと出会えたら、本当にまたとないチャンスと言えるプライスだった。その日の銀座は、H&M効果というか、旋風のせいで人が多く、きもの屋さんの、その値下げっぷりも感慨深い。高い高いと言われるきものだが、上手に捜せばリーズナブルなものも絶対ある。それに最近のブランド物のプライスを考えれば、むしろ安いとも思えてくる。
原由美子
スタイリスト
日本のスタイリストの草分け的な一人。1970年雑誌「an an」創刊に参加。その後、スタイリストとして活動をはじめ、1990年からはフリーのファッションディレクターとして「フィガロジャポン」「婦人公論」「Hanako」など数々のファッションページや朝日新聞のコラムなどを手掛けてきた。著書に「原由美子のおしゃれ上手」など。