2011.12.15
「シルクラブ」さんで行われた組紐「道明の世界展」
ご無沙汰してしまいました。
9月に見た中野区沼袋にある「シルクラブ」さんで行われた組紐「道明の世界展」のことを少しだけ。今は12月、これだけ流れの速い世の中なのに、恥ずかしいことです。
でも私の中では、この道明の世界のことだけが、心のどこかにとどまってずうっと残っています。
遅過ぎは承知ですが見て下さい。
「シルクラブ」は中野山田屋さん──いつも本誌連載ページでお世話になっているきもの屋さんです。──その別館の素敵な日本家屋がイベントスペースとして使われています。
門の前に立っているのは、フィガロの前編集長のTさんと私。一重の季節でしたのでTさんは縞の木綿を粋に。私は鯨岡さんから譲られた藍染めの大胆な鶴亀のきもの。帯は母が残してくれた無地の博多帯。
一階には西陣の誉田屋源兵衛さんの厳選された帯と一緒に老舗「道明」の組紐の販売コーナーも。
現在、私たちがきものを着る時に当然のように使っている帯締め。これをしめるようになったのは江戸末期からだそうです。
時代を経て現在のようなお太鼓に結ぶ帯と帯締めが不可欠となりました。上野の「道明」は、日本で昔から使われ国宝にもなっているような組紐を応用した帯締めを作り、日本の伝統組紐のもつ格調と技術の高さを私たちに示してくれています。
というわけで地下のスペースには奈良時代から江戸時代にかけての歴史的な組紐の復元参考品が展示され、組紐の製作過程を写したビデオの上映も。
熱心に見ていらっしゃるきもの姿の方たちは実際に組紐を作るのを習っていらっしゃる方も多いようでした。
飛鳥・奈良時代の太い格子のもの、平安期の微妙な色合の格子のものなどを見ていると、そのモダンさに驚きます。また日本古来のものなのに西洋の伝統柄であるタータンと同じ美意識も感じられ、不思議な気持ちになります。
江戸期のものも、現在のものにまさるとも劣らない技術と凝った柄、配色が見事です。
2階には世界の名画をイメージして創作された組紐のコーナーがあり、こちらも素晴らしい。
クレーのコーナー
ゴーギャンのコーナー
他にピカソやカンディンスキーもあり、こちらも「道明」の技術とセンスを思い知らされます。
再び一階に降りてずらりと並べられた帯締めを見ると、どれか一本欲しくなります。
思わず熱心にのぞき込んでしまうふたりでしたが
これだけしっかりお勉強した後に、見事にそろったのを見てしまうと、一本を選びだすことは不可能でした。今考えると惜しいことをしたものと後悔ばかりですが。
母が遺してくれたものにも「道明」製が多く、親しみと憧れが入り混じったブランドでしたが、今回あらためて、その底力を実感した次第。
ここまで写真を撮って下さった、本誌連載の編集担当のHさん。彼女は東三季さんで求めた白黒格子の木綿のきものがさわやかにきまっていた。
そしてふたりが持っているのは、偶然見つけたアンティックのブランドバッグ。彼女はセリーヌ、私はグッチのもの。大きさ、持ち手の長さがきものにちょうど良いのです。
シルクラブの脇の道は東京とは思えない雰囲気です。
原由美子
スタイリスト
日本のスタイリストの草分け的な一人。1970年雑誌「an an」創刊に参加。その後、スタイリストとして活動をはじめ、1990年からはフリーのファッションディレクターとして「フィガロジャポン」「婦人公論」「Hanako」など数々のファッションページや朝日新聞のコラムなどを手掛けてきた。著書に「原由美子のおしゃれ上手」など。