2009.03.04
インスピレーションって・・・何?
プレコレクションの際は、次のシーズンのアイデアやキーワードを求めて、必ず美術館やギャラリーを巡るのが私の定番である。
かなり数多くのブランドを取り扱っている為、それをうまくミックスしてRESTIR流に解釈するためにも、やはり今シーズンはこれだ!という後押しをしてくれるものが必要。もちろん世界情勢を考慮に入れなきゃというのもあるけれど、そういう知性的な部分だけじゃなくて、アートや音楽や人のトレンドなどなど色々な角度から見た物事を捉えることも重要なんじゃないかと思うのだ。
今回、ファッション関係者を悩ませまくった、名付けて「イタリアン・インフルエンザ」に、流行物大好きな職業柄のせいか誰よりも先にトレンドキャッチ! そして見事感染。高熱がスパークしすぎて倒れてしまったものの、時間に限りのある滞在期間を無駄にしたくないっ!と、日本では絶対認可が下りないようなフレンチ・ハイパー・ストロング・かぜ薬を投入。咳き込みつつ、若干朦朧としつつ、「これを見ておけ!」という天の声に従ってエキシビションへ向かった。
"Jeu du Poume"で行われていた"Robert Frank"へまず足を運ぶ。
やたら寒いパリ・・・暗いし・・・
今回のエキシビションは、写真集"The Americans"と"Paris"に収録されている写真の展示と彼の映像作品の上映だったが、やはり男気あふれる"The Americans"のパートに心を持っていかれた。
写真集にはジャック・ケルアックが言葉を寄せ、そこに収められた作品を見ていると、まさに彼の「路上」を読んでいるような錯覚に陥る。でもやはりそこに収められた笑顔にも風景にも哀愁があるような、そんな写真。
タイプです。Robert Frank。
どうやらこの写真集、初版から8個バージョンがあるらしく、その都度写真のレイアウトなど違う編集らしい。比べてみてみたいな。
そしてその足で、"BNS"で開催中だった"Seventies: La Photographie Americaine"をチェック。
Diane Arbus、Larry Clark、William Kleinなどなど、時代を代表するフォトグラファーたちの作品が整然と並べられた空間。かなり有名な作品も見ることができて感動の連続。
人の日常を赤裸々に綴り過ぎているからか、時には目を覆いたくなるようなシーンもレンズに収められていた。
彼らがこれらの瞬間を撮らなければ、あまりにも当たり前すぎて誰の目にも留まることなく過ぎ去っていたかもしれない。
怖いほどの、そしてクールなほどのリアリティ。
完全に虜になってしまった。
夢見がちなファッションの世界から、ちょっぴり冷酷とも捉えることができるような現実へと引き戻される。
ファッション写真でないからこそ、自分の内部を揺さぶられてしまった。
一見関係ないように見えるその写真に、たくさんのヒントが隠れていた気がする。
クールな写真たちのおかげで、どちらかというと男気あふれる私に変身したような気持ちに包まれながら、オートクチュール初日に開催されたAlexis Mabilleのショーをチェックしに行く。
Alexisといえば、それはそれはクールなリアリティとは正反対の、夢いっぱいな「カワイイ」を詰め合わせたようなコレクション。
でも彼の世界観も大好きなんです。
仮想現実の中の私、的な解釈で常に挑ませてくれる。
インヴィテーションにもボウ
ヒストリカルな空間も、メルヘンな気持ちへと誘ってくれる。
Robert Frankたちのおかげで、男気あふれる私に変身しそうなところに、ガーリースピリットが程よく注入された。
危ない。
私、うっかり男になっちゃうところでした。
助けてくれて、ありがとうAlexis。
今度はガーリー柴田に変身して、体感気温0度の中、PHIのフレアミニスカートをフワフワさせながら道を歩いていると、POPアート的落書きを発見。この落書き、パリの街のいたるところで見ることができた。頭がまたもやアンディー・ウォーホール時代に吹っ飛ぶ。
さらに車で通りかかったグランパレ前にウォーホールの掲示も発見して、モノトーンからヴィヴィッドなカラーに脳みそがグラデーション・・・。
「カワイイ」な気持ちから、ちょっとクレイジーな感覚へトリップ。
男気あふれて、メルヘンな気持ちになって、ビバ・ファクトリーな感じになって・・・ただでさえインフルエンザでおかしいのに、さらにカオスに陥った頭を抱えながら、Christian Louboutinが刺繍の最高峰"Lesage"とコラボして作ったシューズのお披露目があるということで、夜な夜なパーティーに繰り出す。
テーマは「マリー・アントワネット」って、女の子、皆大好きじゃないですか!
ソフィア・コッポラの映画だって、内容よりもその全体的にかわいい感じに心惹かれたはず。
かくいう私はマリー・アントワネット大ファンで、遠藤周作から藤本ひとみまで、マリー・アントワネットと表紙に書いてあるものは好き嫌いなく何でも取り入れてきたほど。
シャンパン片手に、その素晴らしすぎる靴を眺めながら、高貴な気分に包まれる。
世界で3色各12足だけしか作られない、コレクターにはたまらないアイテム。(お値段5,000ユーロくらいでした・・・)パリの直営店のみ扱っていて、もしまだあれば手に入るでしょう。
このインヴィテーションのシューズがその逸品。Louboutin氏のリニューアルされたばかりのサイト(http://www.christianlouboutin.com/)でも見れます。そして、パーティーでは、チワワを抱いた著名な女性(名前忘れました)によるポエトリーリーディング開催。さらに高貴な空間に。
イギリスの女の子アーティストのデザインによる卵(?)。ラデュレのマカロンみたいでかわいい。シューズもこの卵の中に入ったディスプレイ。後ろにはなんと靴の観覧車!
オートクチュール期間ということもあって、本当にラグジュアリーな気分に包まれた。
そして今思う。
テーマを決めるときのインスピレーションって何なんだろう?
世間の動きや過去の名作や最新のクリエーションや、心を動かされることって山ほどある。
この情報があふれかえっている世の中、真っ先に思いついたものがそれになるのか、なんとなく全体的に擦り合わせるのか。
デザイナーって本当にすごいなって思う。毎回毎回、これ!というキーワードをチョイスするなんて、簡単なようで大変。たまに「今シーズンのテーマは、特にありません。」と言われることもあるけれど、そりゃそんなこともあるだろうな、と今更ながらちょっと納得したりもする。
「テーマが無いのがテーマです。」的な。
ちなみに、ルブタン氏のショールームにあるこの絵。
すっごい腹の立つ顔をしたサルの巨大な絵。このサルシリーズを彼は12枚くらい購入したらしい。各種サル12枚ですよ?
彼はこの絵を買ったとき、どんな気分だったのかな?とか、これに囲まれてたら、イラッとしないのかな?とか、やっぱり天才が考えることは半端ないなと、自分の平凡さが悲しい。
だって何回パリに行っても必ずこの
キラキラしたエッフェル塔に心躍ってしまうなんて、私は単純すぎる。
でもいっぱい見て、いっぱい感じて、パンク寸前になる自分の脳みそが最もバイイングには最適かもしれない。
というわけで、次なるインスピレーションの源を探してNYへ向かいます・・・
柴田麻衣子
リステア マーチャンダイジング&バイイングディレクター
愛知県生まれ。愛知県立大学英文科卒業。リステアに入社し、2002年以降、バイヤーに。現在は同社のマーチャンダイジング&バイイングディレクターとして世界各地でバイイングを行う。