2009.04.23
ファッションとアナーキーとカールとティスケンス・・・
やっと終了した2009/10 AWファッションウィーク。
旅を終えた今、抜け殻のよう・・・
写真もお仕事以外のは、ほぼ撮れずでした。ごめんなさい。
というのも、
自分でも驚くほどのハードな日々だったから・・・。
バイヤー人生始まって以来のハードっぷりだったかもしれません。
世界中がこれまで経験したこともない不況真っ只中に直面したという嫌~な空気が流れる中、そんな中でも「超面白い!超新しい!」というものを店に詰め込みたい!と思ったら、アポイントが通常よりも多くなってしまった。
いや~よく働いた。
でも忙しい中にも合間に娯楽的なものを入れないと頭がうまく回らない上に、冷静な判断ができない習性のある私。
ちょっとでも時間を見つけるやいなや、娯楽スポットに走る。
NYではショーを見る合間にちょうどBryant Parkのテントの近くにあった"International Center of Photography"に立ち寄る。
本当にタイミングよく"Years of Fashion"と題した写真展が開催されており、ここから1年様々なファッションフォトグラフを展示していくというプロジェクト。
今回は、20-30年代に活躍した写真家"Edward Steichen"が開催されていた。
以前Jeu du Paumeでも開催されていた彼の写真展。まるで絵画のような世界。
何が好きって、彼は撮影の際、ダブルのスーツでハンチングを被り、きりっとした紳士然たるスタイルで撮影するところ。ぱっと見、どこから見てもフォトグラファーに見えないくらい紳士。そんな貴重な撮影風景の映像も見ることができた。
そしてエントランスのゾーンでは"Fashion Photography Now"と題した、現代に活躍する大御所写真家たちからエディ・スリマン、カール・ラガーフェルドまで、彼らのファッションフォトや主要ファッション誌のカバーを一挙に見られるという、本当にファッションフォト大好き人にとっては大興奮のエキシビション。
ハードなショー&ショールーム回りの合間、つかの間の充電のひと時。
偉大な作品を見ることは、本当に自分にパワーを与えてくれる。知識の部分だけじゃなくて、精神的に訴えかけてくれる。
また、いつも大切にしていることは、『Back to Basic』。
アーカイブや基本を再度認識することで、やっとトレンドをキャッチする力がつくのではないか?というのが持論。
次回フィーチャーされているのは敬愛してやまない"Richard Avedon"のFashion Photography特集。5/15~9/6まで開催とのことなので、何が何でも、何とかして行こう!と誓う。
そんなNYでは、今回面白い?というか、Intimate?アート?というか、かなり興味深いナイトスポットに足を運ぶ。ファッションピープルの間では有名なバー(っていうのかな?)"The Box"。エンタテインメント・シアター・バー的な場所だが、今回ステージの真ん前でそのショーを1部、2部ともに見た私、その後2日くらい衝撃を引きずってしまいました・・・。
とてもじゃないけどここにその内容を記載することは出来ません。見た人にしかわからないあのクレイジーさ。
NYに行く予定のある方、あとある種のきわどいネタを冷静に笑える方にはおすすめです。
アンダーグラウンドすぎず、アッパーイーストサイドすぎず、大人にある意味客層も含めてぴったりなスポットかも? おすすめです。
The Box
Address:189, Chrystie Street, New York, NY10002
Tel:212・982・9301
http://www.theboxnyc.com/
さて、体感温度マイナス5度くらいのNYからミラノを経由して、愛するParisへ。
Paris Fashion Weekは、シーズンで出会った物事を集結させるという意味でも最もアガる大切なとき。
にもかかわらず、今シーズンは世界的な不況ということもあるし、多くのブランドが比較的コンサバティブなメッセージを打ち出していたような気がする。
もちろんみんな美しいのだけど、いつもなら出まくって処理しきれないアドレナリンが今回はそんなに出てこない。
切ない・・・。
「それでもファッションは動くし、こんなときだからこそ淘汰されて、よいものだけが残る」というカールの言葉を胸に、アドレナリン放出レーダーの感度を上げてショーを回る。
ベストエンタテインメントショーはもちろんAlexander McQueen。彼はいつも期待を裏切らないし、後にショールームに行けば、そのMD力の素晴らしさにはやはり感心させられた。でもこれはもう殿堂入りなので多くを語ることはあえて避けるとして、この他に今回最も衝撃を与えてくれたのはなんといってもNina Ricci。
実は、オリビエ・ティスケンスのデザインは、RESTIR的にそんなに得意じゃなくて、Rochasのときも何度見に行ってもバイイングには踏み切れなかったし、Nina Ricciもラースからティスケンスにデザイナーが交代してからも、何度見てもやはりバイイングには至らなかった。原因は具体的に表現できないけど、何らかのツボが違う感じ。
そんな彼の、Nina Ricciのメゾンにおける最後のデザイン(ショーの時点ではまだ噂段階だった)が、本当に本当に本当に素晴らしかった。
まずショールームに入って、真っ先に見に行ったのが、ショーで人々が驚きで思わず声をあげたシューズ。
おそらく世界一高いであろうプラットフォーム。
ヒールが・・・
ない・・・
このタイプはよく見るとヒールあるけど、ちょっとしかないから床についてないし・・・意味ないし・・・
これはもう、芸術としか言い様がない。
このエベレスト級のプラットフォームが作り出す、細く細く長いシルエットが、スタイルに更なる強さと、危険な美しさを出す。
だけど残念ながらもちろんオーダーはしていないです・・・
だって歩けないし。
でもそういうのってかなりファッションじゃないです? 一見必要ないのにメッセージを含んでいるもの、そんなものを、こんなご時世に生み出しちゃう思想自体が大好き。
そして奥に足を進めると、この世のものとは思えない程の美しさを醸し出すドレス。刺繍も、ラッフルも、生地のコンビネーションも、素晴らしい。
「どこに着て行くの?」って、知りません。いいんです。
ずっと見ていたいだけです。

もっとデイリーユースなショーピースももちろんあって、今回ベストレザージャケットの呼び声高い、こちらのルック。いたるところでフレンチマダムが口をそろえて、「今回Nina Ricciのレザージャケットは絶対買うわ!」って合言葉のようになっていました。
納得。
だって素材もディテールも素晴らしいのだから。
ゴシックさもあるけど、それに勝るクラス感も併せ持つ。
個人的に購入したいのはこの2つ。一見難しいシルエットだけど、エロスな感じが程よい。
セクシーすぎず、強すぎず、でもセクシーで強い。訳のわかんない立ち位置がたまらない。
とにかく素晴らしかった。
きっとここには、デザイナーを辞任するティスケンスのプライドや、怒りにも似た強烈な思いが込められていたんだろうな、と思う。だからこんなすごいものが生み出されちゃったんだろうな。
ファッションって、ある種、アナーキーな精神が大事なんだろうと思う。
デザイナーの強い思いが打ち出されているときのコレクションって、すごいパワーを放つ。
逆境ってよいものを生み出すんですね。
これ、現代の情勢にも置き換えられるかもしれませんね。
Nina Ricciのおかげで、いい感じの気分に復活できた。
そして翌日に行ったMaison Michelのショールームでまたもやティスケンスに遭遇。
今回、Maison Michelは、カール・ラガーフェルドが撮影・監修したフォトブックを出すとのことで、主要なファッショニスタがモデルとして登場する。そこにティスケンスがモデルとして登場。イケメンなので、映えますね。
ティスケンスのほかにも
今回ショー出席率No.1のミラ・ジョヴォヴィッチ
ルー・ドワイヨン
などなど、まだ制作途中らしいけど本当に完成が楽しみ。
完成次第、RESTIRの外のLEDスクリーンでも流す予定なので、お楽しみに。
ここのハットやヘアアクセサリーは、着けてみて初めてその良さがわかるので、リアルファッションフォトの提案は本当にいい。アナログなのかもしれないけど、一番伝わる。
ところで、
NYで見たエキシビションのカールの写真、不況に対する考えを支えてくれたカールの言葉、そして彼が撮ったティスケンスの写真と彼が作り上げた、最高峰のコレクション。
なんかリンクしてません?
強引だけど全部リンクしてるような気がする。
そしてもう1つ。
ある種の反骨精神が生み出すパワーっていうのは、人の固定観念をも覆すクリエーションにつながる。ファッションってそもそも自己表現のツール。着飾るってことに注目しすぎて、自己表現するっていう発想から結構ずれちゃってた昨今。今そこに回帰すべきですよね?カール? そうだよね?ティスケンス??
柴田麻衣子
リステア マーチャンダイジング&バイイングディレクター
愛知県生まれ。愛知県立大学英文科卒業。リステアに入社し、2002年以降、バイヤーに。現在は同社のマーチャンダイジング&バイイングディレクターとして世界各地でバイイングを行う。