2010.02.26
友達のうちのごはん その7
"春節"という響きを聞くだけで、気持ちが弾む。
毎年、2月のある日曜朝、爆竹の轟く音で飛び起きる。急いで階段を駆け下りて、お獅子とお囃子の楽団が練り歩くのを見る・・・ここは北マレに広がる中華街のすぐ側。
これも、ひとつのパリ風景です。
これが、長くて暗い北国の冬から、一気に"春の目覚め"の合図。
数年前の事、お獅子を見てから部屋に戻ると、ずっと眠っていたミョウガの鉢から、一斉に白い芽が飛び出していて・・・「やっぱり、植物にも耳があるのだわ!」と確信した事がある。
午後は、パリ市庁舎から出発するドラゴンを迎える。毎年、このパレードを見る度になぜか涙が出てくる・・・"なんという逞しさよ! こんな民が他にいるかしら・・・"
そして、いつも強く感じるのは、文字の力。大昔から言霊の威力を知ってる人達なのだと思う。
春霞の中からドラゴンがやって来るよう・・・

この日の人気者は、やっぱり、被りものでしょう!
寒空の中、お父さんの肩車で、ドラゴンを応援している女の子が持っていたのは・・・
おじいさまから譲り受けたというキッチュなアンティークの龍でした
この夜は、突然、パリの中国人アーティストカップル、Juan とChengdongのお宅にお邪魔させて貰いました。若い夫婦らしい,ささやかでかわいい暮らしぶり。
私にとっては、初めての中国式のお正月。まず、とっても感激したのは、遅れて到着した私の為に、この日のシェフ、旦那さまであるChengdongさんが、一皿一皿を丁寧に温め直してくれた事・・・なんという"おもてなし"だろう!その優しい心遣いがとっても嬉しい。気持ちもごはんも"あったか、アツアツ"です。
旧正月の大晦日、夜中の12時になったら頂くという、餃子をはじめ、美味しいご馳走をたくさん作って振舞ってくれました。
メニューは・・・
1.皮から全て手作りの牛肉とセロリの焼餃子
2.鶏のオーブン焼に醤油ベースのソース
3.酢豚
4.牛肉と玉ねぎのクミン炒め
5.豚三枚肉のピリ辛ソース
6.湯葉、キクラゲ、キノコ、ブロッコリー炒め
7.白菜と豚煮
いいですね~~、このコテコテした感じがたまらない迫力です。
ギョーザの皮は、フランスの強力粉、つなぎに卵を入れるという・・・もちもち、かりっと焼き上げたところが、美味しかった!
こうして頂く中国料理とは、つくづく大らかで大陸的なごはんだと思う。
ひとつのものをみんなで分け合って食べる、たっぷりと作って、大人数になっても"さあ、いらっしゃい!"
個を重んじる西洋の食事が、急に素っ気なく冷たく感じてくる。
昔見た客家のドキュメンタリーの中で、繰り返し大家族で食卓を囲む場面が出てきて、食べながら皆の結束や絆が強まっていく様子が面白かったのを思い出す。
食事の後は、日中お茶対決・・・友が持参した日本の玉露と台湾の烏龍茶。丁寧に淹れると、こうも違うものか・・・自分で飲む中国茶とは、全く違う味わい。
Juanが茶器を温めながら淹れる仕草がとっても優雅です。
そういえば、そもそも旧暦で生きているというのも、雅な感じがしてくる。
私は、お茶の所作に魅了されたのと香りの高さで、軍配を烏龍茶に挙げました。
造形作家、現代美術家として、それぞれに活躍する2人。
手前がJuan,奥にChengdongさん
Juanは、3月中旬から始まるパリ8区のギャラリーでの個展の準備中。
©MENG Juan
☆La cinquiéme galerie www.la-cinquiemegalerie.com
Chengdongさんは、彫刻家として教鞭を執りながら、精力的に作品を造り続けていて、フランスの数々の芸術賞を受賞。彼の作品は、毎年エルメス社が購入して、美術コレクションとして大切にされているそう。これからの活動も楽しみです。
©GUO Chengdong
着いてから帰るまで、楽しくて楽しくて、ずっと笑っていた。実に大らか朗らかで、気持ちの良い人達。こんな出会いがあって、「こいつぁ~、春から縁起がいい~ねぇ~!」
今夜もごちそうさまでした!
HARADA SACHIYO
料理クリエーター
自身のブランド「hoa*hoa」をはじめ、長い間、モードの仕事に携わる。2003年渡仏、料理学校でフランス料理のCAP(職業適性国家資格)を取得。ホテル・ムーリス、京料理店、寿司店での研修を経て、2006年より、日本料理教室、出張料理、レストランのコンサルタントなどの活動を展開。現在、料理本の出版準備中。パリ発のWEBマガジンchocolatmag内に「こども厨房へようこそ」連載中