2009.01.28
今夜は初ふぐ!!
場所は赤坂、創業昭和41年の老舗、「赤坂鴨川」である。駅に近い現在の場所に移転してはや15年。それ以前からのおつきあいになるから、このお店ともかなりの昔なじみ。そう、かれこれ20年以上にもなるだろうか...。
開店当初から変わらず包丁をふるっているのは、名物女将、大菅孝子さんの父君、大菅正孝氏。御年84歳になった現在も、早めに帰宅なさるとはいえ、毎日厨房で仕込みに目を光らせているそうだ。
メインのふぐもさることながら、向島の古い料亭で磨いたその腕のほどを垣間見られるのが、コースの最初に登場する前菜の数々。ふぐの身で作る金箔しんじょ、ふぐだしで焼く玉子焼にふぐの煮凍りなど、ひと手間かけた佳肴が常時6~7品、中華の円卓を思わせる丸盆に盛りこまれているのは、なかなか圧巻である。
これを楽しみに訪れる常連客が多いというのもうなづける。もちろん、ふぐも美味。ここでは、下関直送と築地で仕入れるふぐとの2パターンを使い分けている。もちろん天然。それも、1.2~1.5kgのシロのとらふぐを厳選!
活けのふぐをしめてさばいた後、サラシにきっちり巻いて1~2晩ねかし、旨味を熟成させてからお客に出すのが、昔からのここのやり方だ。なるほど、通常よりやや厚めに切られたふぐ刺しは、ほんのりとあめ色がかり、噛みしめるほどにジワジワと味蕾にしみていく旨味は、玄妙。清新にして、その淡い甘みポン酢をつけるのがためらわれるほどだ。塩で十分旨い(MY塩持参の私です)。このたおやかな味わいを古から日本人は愛してきたのだ。といっても、ふぐ刺しが一般的に食されるようになったのは、明治に入ってからのことらしいが。
ふぐ刺しの味の余韻もさめぬうちに、今度は、いよいよ"ちり鍋"の登場である。大皿の上には、なんと、とらぶぐが一尾。姿のまま横たわっている光景は、なかなかの迫力(シュール!?)だ。他に、しゃぶしゃぶ用に厚めにスライスしたふぐと大きくカットした皮もついている。
いやいや実にダイナミック。でも、ふぐ鍋はこうでなくちゃね。ふぐ、食べたぁっていう気にさせてもらえなくちゃ。贅沢このうえない。
まずはしゃぶしゃぶ。身もいいが、皮が意表をつく旨さ。とろん、ぷるんと口の中でとろけて何とも官能的だ。コラーゲンもたっぷりで美肌効果も期待できそう!? ふぐは、意外にゼラチン質が多い。皮はまさにゼラチンの塊の如くだが、ちり鍋にしても、天然のふぐは、食べ進むほどに口唇のあたりがねっとりとしてくるのがわかる。よく鍋は雑炊の前哨戦のように言われるが、それは養殖のふぐの話。上質の天然ふぐには、何ともいえぬ雅味、淡味、妙味が潜んでいる。
飲めないお酒もヒレ酒なら少しはいける(といってもコップ1/3ほどですが)。ほろ酔い気分で、〆めはもちろんお雑炊。ふぐの旨味のエキスが凝縮されたスープがジワリと染み込んだごはんは、本当においしい。これを食べずしてふぐの旨さは語れないと思う私です。
ちなみに。
鴨川はコースのみ。1万8000円~2万9000円。要予約です。
赤坂 鴨川
東京都港区赤坂 3-9-15 第二クワムラビル 1F
☏ 03-3583-3835
営業時間/17:00~23:00
定休日/日・祝
http://www.kamogawa.cc/
森脇慶子
フードジャーナリスト
「dancyu」をはじめ、数々の雑誌やメディアのグルメシーンで活躍する、フードライターの草分け的存在。取材はもちろん、プライベートでもひたすら食べ歩きに邁進。その小柄な体からは想像できないほど強靭な胃袋の持ち主。「東京最高のレストラン」の採点者を務めるなど、その舌に絶大な支持を集める。