2009.03.25
「ビンゴ」で仔牛の内臓のフルコース!
時折、深夜にメール(携帯です!)が入る。「仔牛の内臓、入りました」。広尾のイタリアン、「ビンゴ」の小林秀徳シェフからだ。そう、ここ「ビンゴ」には、たまに、とびっきり新鮮な仔牛の内臓が入る。(どうやら秘密のルートらしいのだけれど・・・)
で、このメールが入ると、いつもディナーのスケジュールを調整して、2~3日のうちには、必ずいそいそと出かけていく私なのだ。
というわけで。今夜は、仔牛の内臓のフルコースです! こういう時は、大抵一人。いえ、何も、内臓を一人占めにしたいからではありません!!(少しはあるかな・・・)
内容が、ちょっとマニアックなので、つい誘う相手を考えてしまうのだ。何といっても、まず、大の内臓フェチでなくてはならない。第二に胃袋に自信がなくてはならず、第三に雰囲気よりも味重視の人でなくてはならない。こうなると、必然的に相手は絞られてくる。
それに、ここは、一人の方が気楽でいい。カウンターに、一人陣取り、小林シェフの白熊のような!!白いTシャツの後ろ姿を眺めつつ、マダムと談笑していると、不思議に心が寛ぐ。
小林秀徳シェフ
まずは、メニューを見せてもらって、食べたい料理をピックアップする。「ビンゴ」にはコースしかないと思っている方も多いようだけれど、ここアラカルトも随時対応してくれる。今日は、内臓をガッツリ食べたいゆえ、前菜はほどほどに。でも、パスタははずせない。それと、必ず頼むのが蒸し野菜だ。
小林シェフは、千葉のアサノファームを始め、京都の樋口さんや石割さん、名古屋の素人の人(といつも彼は言っている)、福岡の実家のお母さんetc数ヶ所から野菜を取りよせている。それらをいろいろ取り合わせて蒸してくれるのだが、味つけはわずかに塩のみ。野菜が新鮮で元気だから私にはこれで十分だ。季節によって少しずつ内容が変わるのも楽しみ。時には、思いがけない野菜が入っていて驚くこともあるけれど。
季節の蒸し野菜
スタートは、生カキ。続いて、この蒸し野菜で胃袋の調子を整えたところで、いよいよ内臓に突入である。
一品目は、仔牛のタン。柔らかくボイルされている・・・と思ったら、なんと小林シェフ、和食よろしく蒸し器で湯煎にかけて蒸しているのだ。そのままカットもせずにドンと皿に盛りつけられているのが、「ビンゴ」らしい。いかにも"仔牛"といったいたいけないサイズにチョッピリ心が痛む・・・けれど、おいしい。淡い肌色の色合いから想像されるように、口当たりも優しげ。ふわっと柔らかく、どことなくミルキーな味わいがするのは気のせいだろうか。添えてあるのは、サルサベルデと塩。サルサベルデがよくあう。
仔牛のタンのボイル
続いて登場したのは、レバーのグリル。成牛のそれと比べると、味わいは可憐なほど軽い。よほど鮮度がいいとみえて、コリコリプリプリの歯触りが小気味よい。グリルといってもサッと焙っているだけ、どちらかといえば叩きに近い。梨のモスタルダが添えられるが塩で十分。臭みは全くない。
仔牛のレバーのグリル
次にハツ。レバーと同様、血の味の濃い部位だが、より血の味がピュアな気がする。筋肉質なシコシコと食感も心地よく、鉄分の旨味がたまらない。牛の他にも、豚、鶏、馬に羊、鮪、鰹と何によらず、ハツは大好物の一つだ。
で、最後は、ロニヨン。腎臓である。これが旨い。そしてこれだけフレッシュな腎臓にはなかなかお目にかかれない。部位が部位だけに、ちょっとでも鮮度が落ちると独特のアンモニア臭がする。伝統的なフランス料理には、この腎臓をマスタードソースなどで食べさせる一品もあり、それはそれでおいしいけれど、ある意味、臭いをごまかしている料理ともいえる。
でも、「ビンゴ」の場合、炭火で焼くだけ。味つけもガルムのみといたってシンプル。にもかかわらず、あっけないほど臭みがない。部位ごとに変わる様々なテクステュアがホルモンの魅力だが、腎臓はとりわけて食感が楽しい。コリッとしたところやチョッピリクニュッとしてシコシコしていたり、鮮度が良いほど、その食感は鮮明だ。しかも、サッパリしているようで、脂を感じさせる部分もあり、舌をあきさせない。勢いに任せ、一頭分を食べてしまったこともある(といっても、2個ですが)。
仔牛のロニヨン(腎臓)のグリル
さて、内臓を堪能したあとは、パスタで締め。今日は、青菜のタリオリーニだ。ほうれん草など何種類かの青菜を練りこんだ、いわば青汁パスタだ。クロレラ入りか茶そばかと思うほど、緑、緑している。これを、小林シェフは、なんと、細かく叩いてなめろうのようにしたうるめ鰯とあえて出してくれた。細かく刻んだ大根かかぶが隠し味となり、いい味を出している。
青菜のタリオリーニ
デザートは作りたてのいちごアイス。サッパリとして、おなかいっぱいの胃にはピッタリでした。
デザートのいちごアイス
東京都港区西麻布4-19-9 ウォール西麻布B1F
☏03-5774-5721
定休日/不定休
営業時間/18:00~24:00(L.O.)
森脇慶子
フードジャーナリスト
「dancyu」をはじめ、数々の雑誌やメディアのグルメシーンで活躍する、フードライターの草分け的存在。取材はもちろん、プライベートでもひたすら食べ歩きに邁進。その小柄な体からは想像できないほど強靭な胃袋の持ち主。「東京最高のレストラン」の採点者を務めるなど、その舌に絶大な支持を集める。