TOPIC PATH
HOME
  >  COLUMN
  >  今日はこれをいただきました
  >  「なべ家」の"落ち鮎と〆鯖、松茸の会"最終日
「なべ家」の

2009.10.29

「なべ家」の"落ち鮎と〆鯖、松茸の会"最終日

あれほど待ちかねた鮎の季節もあっというまに過ぎ、早や最終章。落ち鮎のシーズンももうあとわずかを残すばかりとなった。その名残を惜しむかのように、今夜は「なべ家」を訪れた。10月1日から始まっていた"落ち鮎と〆鯖、松茸の会"の今日は最終日だ。食べ友の一人、S社のY嬢と現地でおちあう。

「森脇さん、今年、何本食べました?」座りしなに、Y嬢から質問がとぶ。
「エッ、エート・・・219匹かなぁ・・・。まだ、現在進行中だけど」
そう、まだ、オーラスには「鮎正」の焙り鮎が控えている。すでに5本キープしているから、予定では230本は行くつもり・・・でいる。

そんな話をしているうちに、前菜が運ばれてきた。この間と同じ(実は10日前にも1度来ていた)名物の江戸前卵焼きと鮎の風干し、梅しぐれの盛り合わせに、今日は、蒸した鯛をむしったものにもってのほか(菊花)ときゅうりの酢のもの、だしでサッと炊いた舞茸を盛り合わせた一皿も登場。

moriwaki091029-1.jpg 名物の卵焼きや梅しぐれなどが入った前菜盛り合わせ

moriwaki091029-2.jpg 鯛の蒸しものや菊花の酢のもの

この鯛が旨い。「天然の鯛だからおいしいわよね」そう女将さんは言うけれど、それだけではないはずだ。鯛の身は、ともすれば、パサついたり、固くしまってしまいがちだ。それをこんなにふんわり、しっとりと仕上げるのは、やはり、ご主人福田さんの技量によるところだろう。

お次は豆腐となめこのお椀。と書くとフツーのように思えるが、さにあらず。ヨォーク写真をご覧いただきたい。わかるだろうか? なんと豆腐が、なめこと同じぐらいの球状になっているのだ!! しかも、これ、お箸でつまめるのだから二度びっくり。ホワホワプヨプヨのなんともいえない弾力は、とても丸くくり抜いたのでは生まれない。

moriwaki091029-3.jpg 豆腐となめこの吸い物

くり抜いた豆腐では、箸でつまむとすぐにくずれてしまう。いったいどうやって?と聞いてみると「小さくさいの目に切って、それをザルの上でころがすンですって。するとカドが自然にとれて丸くなるのよ」とは女将さんの弁。なめこと同じぐらいの大きさにしてあるのも心憎い。ツルッとしたなめこの食感と好相性だ。

お椀でホーッとひと息ついたところで、〆鯖。さすがに脂がのっていて旨い。生姜じょうゆではなく、和辛子を溶いて食べるのが「なべ家」流(というか江戸風なのだろう)。ツマは赤芽とネギ、それに大根おろし。大根おろしには、細かく細かく刻んだ生姜がしのばせてある。

moriwaki091029-4.jpg 〆鯖

お酒は、ほとんど飲めない私だけれど、つい一杯欲しくなる味だ。で、Y嬢の冷酒をおちょこに一杯、舌になじませるようにして頂く。ウ~ン、秋だなぁ。

すると、大鉢に盛られて、今夜のハイライト、鮎が運ばれてきた。子持ち鮎の塩焼きである。実は、"鮎の煮浸し"がこのコースの本来のメニューなのだが、「鮎は塩焼き」と決めている私は、我がままを言って塩焼きにして頂いている次第。これも20年以上のお付きあいなればこそ、といったところだろうか。

moriwaki091029-5.jpg 子持ち鮎の塩焼き

ホッコリと焼きあげられた鮎を頭からガブリ。この季節にしては、小ぶりの鮎を集めてくれたのだろう。丸かじりしても、思ったより骨が当たらない。さすがに、盛期のような精悍な香りはないけれど、しっとりとした子と身をかみしめれば、ひなびた旨味がしみじみと広がり、苔の香りが、舌を通して仄かに伝わってくる。秋の鮎の味だ。

この季節には、この季節の鮎の味がある。それが楽しみなのだ。皿にのっているのは、全部で8本。1人4本ずつの勘定だが、Y嬢、「私、おなかいっぱいになってきちゃった。3本でいいわ」のありがたいおことば。遠慮せずに5本頂きました。これで224本!!

鮎のあとは"おろし蕎麦"。この流れもオツ。鮎と蕎麦ってなんか粋な組み合わせだ。そういえば、あの獅子文六も大の鮎好きで、しかも蕎麦も大好物。(私と似ている・・・。否、私が似ている、と言うべきか)。その著書の中には、鮎と蕎麦について書いたエッセイもある。

moriwaki091029-6.jpg "おろし蕎麦"

鮎と蕎麦を食べ、すっかり終わった気分でいたところに、"焼き松茸"が堂々登場。信州産の松茸だそうで、香りもさることながら、歯切れがいい。クキッとしてシャキシャキ。ひとかみすると、肉汁のように旨味の汁がにじみ出る。

moriwaki091029-7.jpg "焼き松茸"

秋の木の葉に埋もれて登場するその演出も興をそそる。おなかはいっぱいでも、松茸は別腹と思っていたら、〆の汁かけ飯も難なくサラサラと頂いてしまいました。

デザートは定番の玲瓏豆腐。豆腐を寒天で固めたものに黒みつをかけて食べる一品。江戸時代に書かれた「豆腐百珍」に載っていた料理を、福田さんなりに解釈したものだ。

moriwaki091029-8.jpg 玲瓏豆腐

小皿にのせた3種類のぶどうと共に頂いてフィニッシュ。"梅しぐれ"をおみやげに頂いて帰路についた。

なべ家
東京都豊島区南大塚1-51-14
☏03-3941-2868
営業時間/17:00~19:00(L.O.)
定休日/日・祝 ※要予約
http://www.gourmet.ne.jp/nabeya/
PREV  |  NEXT >
2009.10.29  |  GOURMET
COLUMNIST

森脇慶子

フードジャーナリスト

「dancyu」をはじめ、数々の雑誌やメディアのグルメシーンで活躍する、フードライターの草分け的存在。取材はもちろん、プライベートでもひたすら食べ歩きに邁進。その小柄な体からは想像できないほど強靭な胃袋の持ち主。「東京最高のレストラン」の採点者を務めるなど、その舌に絶大な支持を集める。

BACK NUMBER
BACK NUMBER